新富士駅 (静岡県)

新富士駅：東海道新幹線を彩る、孤高の駅

静岡県富士市川成島に位置するJR東海道新幹線の新富士駅は、1988年、地元住民の強い要望によって開業した請願駅です。総事業費132億8,652万円という巨額な費用は、富士市をはじめとする周辺自治体の多大な努力によって実現しました。

他の新幹線駅とは一線を画す存在感

新富士駅は、東海道新幹線において、在来線と接続していない数少ない駅の1つです。新幹線単独駅であり、その独特の立地が、この駅を他の駅とは異なる存在にしています。最寄りの在来線駅である富士駅までは約2kmと少し離れており、路線バスやコミュニティバスが両駅間を結んでいます。

開業当初から「こだま」のみ停車する駅として知られ、その戦略的な位置づけが伺えます。かつては、身延線を新富士駅まで延伸する計画や、DMV（デュアル・モード・ビークル）による富士駅や岳南電車岳南線との接続計画も検討されましたが、様々な事情により実現には至りませんでした。

開業までの道のり：地元住民の熱意と粘り強さ

新富士駅の誕生は、地元住民の粘り強い運動の賜物です。1970年代初頭から、地元自治会が中心となって新幹線停車を強く訴えかけ、官民一体となった「東海道新幹線富士駅設置促進期成同盟会」が設立されました。

アンケート調査では90%以上の住民が新駅設置に賛成し、その熱意は関係各所に届き、1984年、ついに設置が決定。その後、建設工事が進められ、1988年3月13日、新富士駅は開業を迎えたのです。

駅構造と設備：富士山を望む洗練された空間

新富士駅は、相対式ホーム2面2線の高架駅です。ホームの壁面は全面ガラス張りとなっており、富士山を望む絶景を堪能できます。駅舎内にはJR全線きっぷうりばや自動改札機などが設置されていますが、東海道新幹線駅では珍しくキヨスクはありません。しかし、地元駅弁業者による売店があり、地元の味覚を楽しむことができます。

利用状況と歴史的出来事

開業当初は、大石寺への参拝客増加を見込んでいましたが、日蓮正宗と創価学会の破門という出来事が利用客数に影響を与えました。1991年には、前年と比較して大幅な利用者数の減少が見られました。

近年では、1日平均乗車人員は2,500人程度と安定した利用があります。また、新富士駅は、富士スピードウェイで開催された日本グランプリのシャトルバス運行拠点にも選ばれたり、のぞみ号殺人事件の緊急停車駅にもなったりと、歴史的な出来事にも関わってきました。

駅周辺：工業地帯と住宅街が調和するエリア

新富士駅周辺は、住宅地と工業地帯が混在する地域です。北へ約2kmに位置する富士駅へは、静岡県道174号線（富士見大通り）が主要なアクセス道路となっています。駅南東側には商業施設や田子の浦港がありますが、港まではやや距離があります。

アクセス：バス路線網が充実

新富士駅からは、富士急静岡バスやコミュニティバスなど複数の路線バスが運行しており、富士駅や周辺地域へのアクセスに便利です。高速バスも利用でき、東京や成田空港へのアクセスも良好です。富士駅との間では選択乗車の制度も利用でき、利便性も高くなっています。

未来へ向かう新富士駅

新富士駅は、地元住民の熱意と努力によって誕生し、今日まで発展を続けてきました。新幹線単独駅という特殊な立地条件を活かし、今後も地域の拠点として、更なる発展を遂げていくことが期待されます。

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