新庄健吉

新庄 健吉: 大日本帝国陸軍の諜報員

新庄健吉（しんじょう けんきち）は、1897年9月30日に生まれ、1941年12月5日に逝去した大日本帝国陸軍の軍人であり、階級は主計大佐でした。彼は陸軍経理学校教官や支那派遣軍経理部員としての経験を持ち、特に情報分析において顕著な能力が評価されました。

経歴の始まり

新庄は京都府に生まれ、地元の中学校を経て、1915年に陸軍入りし、経理学校に入校しました。彼は1918年に卒業した後、陸軍三等主計として歩兵第62連隊に配属されました。シベリア出征を経て、数々の役職を歴任しながら、経済学を東京帝国大学で学びました。1920年代後半からは経理局や海外派遣の任務に従事し、1930年に大学院を修了したのちも、陸軍でのキャリアを続けました。

新庄は1935年から1937年にかけてソビエト連邦やポーランドに駐在し、軍事研究を行いました。また、1938年には企画院調査官としての役割を担うなど、多様な経験を積んできました。1940年には主計大佐に昇進し、翌年には陸軍経理学校の教官に就任しました。

対米諜報活動

1941年1月、アメリカへの出張を命じられた新庄は、対米諜報という重要な任務を任されました。彼の主な目標は、アメリカの国力や戦力を調査し、日米戦争に備えた戦争の見通しを立てることでした。4月にニューヨークに到着した新庄は、三井物産の社員を装い、エンパイアステートビル内で情報収集を行いました。公開情報を基に、アメリカの戦力や資材の備蓄状況を数値化し日本との国力差を明確にしました。

アメリカの重工業の生産力は、日本の20倍、化学工業でも日本の3倍で、この差を縮めることは不可能であると結論づけました。数ヶ月間の厳しい調査の結果、新庄は疲労から体調が悪化し、10月にはワシントンに移り、ジョージタウン大学病院に入院しました。12月4日、急性肺炎を併発し、44歳でこの世を去りました。彼の葬儀は、日米開戦の前日である12月7日に、ワシントンの教会で執り行われました。

葬儀と歴史的背景

新庄の葬儀が真珠湾攻撃の日と重なったことは、歴史的に重要な意味を持ちます。この日の日本政府は、アメリカに対する最後通牒を予定していましたが、その通告が遅れたことは多くの議論を生みました。斎藤充功によると、新庄の葬儀に参加した外交官たちが遅延の要因となったとされる一方で、実際には葬儀社の記録に大使らの名前が見当たらなかったことが多くの疑念を呼び起こしています。また、実際に日本側からアメリカへの通告が遅れた理由として、翻訳の遅延が指摘されています。

新庄の遺骨が日本に帰国するまでには約1年を要しましたが、彼の戦争における洞察や情報分析は、当時の日本の戦略に大きな影響を与えたと考えられています。彼の短い生涯と、その中で成し遂げた業績は、今日でも多くの人々に忘れられることなく語り継がれています。

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