新抄格勅符抄

『新抄格勅符抄』（しんしょうきゃくちょくふしょう）は、平安時代に成立した全1巻の法制書です。この書物は、奈良時代から平安時代初期にかけての法制度、特に皇親、諸臣、神社、寺院に与えられた封戸に関する規定を詳細に記録しています。具体的には、大同元年（806年）の太政官牒をはじめ、封戸に関する様々な法令や太政官符が収められています。また、長保元年令とその改訂に関する内容も含まれており、当時の法制度の変遷を知る上で非常に貴重な史料となっています。

収録されている主な内容は、以下の通りです。

大同元年（806年）の太政官牒：神社・寺院の封戸に関する規定を列記。
奈良時代以降の皇親・諸臣、神社・寺院の封戸に関する規定。
* 長保元年令およびその改訂に関する太政官符。

これらの記述から、『新抄格勅符抄』は、奈良・平安期の封戸制度、神封、そして新制に関する法制史料を研究する上で欠かせない文献であることがわかります。

現存する『新抄格勅符抄』の祖本は、元々水戸徳川家が『大日本史』編纂のために醍醐寺報恩院から写したとされています。この写本は書名もその内題に由来しますが、残念ながら残欠本であり、醍醐寺本自体も現在は失われています。このため、現存する写本は非常に貴重なものとなっています。

また、『新抄格勅符抄』は、藤原通憲（信西）の蔵書目録である『通憲入道蔵書目録』に所収されている『格勅符抄』と同一であるという説も存在します。しかし、この説には否定的な意見も多く、特に『新抄格勅符抄』には三代格が含まれていないことがその理由として挙げられています。この点は、今後の研究によってさらに解明されることが期待されます。

このように、『新抄格勅符抄』は、その内容の重要性や現存する写本の希少性から、歴史学、特に法制史研究において重要な位置を占める文献です。今後の研究においても、その価値が再認識されることでしょう。

参考文献として、川尻秋生氏の「新抄格勅符抄」（『歴史学事典 9 法と秩序』、弘文堂、2002年）が挙げられます。この文献は、本書に関する詳細な解説を提供しており、より深く理解するための助けとなるでしょう。

もう一度検索