神封

神封（じんぷ）とは

神封とは、古代日本において神社に寄進された封戸（ふこ）のことです。封戸とは、特定の個人や団体に与えられた土地とその住民を指し、そこからの租税や労役を徴収する権利を意味します。神封の場合、その対象は神社であり、神社の運営を支える重要な基盤となっていました。

神封戸（じんぷこ）の役割

神封に属する住民は、神封戸（じんぷこ）と呼ばれました。彼らは、租税や課役を神社に納めることで、神社の経済的な基盤を支える役割を担いました。また、祝（はふり）などの役職を務め、神社の祭祀や運営にも奉仕しました。神封戸は、神社にとって不可欠な存在であり、神社の活動を支える上で重要な役割を果たしていました。

神戸（じんこ、かんべ）との関係

神封は、一般的に神戸（じんこ、かんべ）または神部（かんべ、かむべ）と同義とされることが多いです。しかし、その成立時期や初期における役割には差異があったと考えられています。神戸の多くが大化前代に遡る部民であるのに対し、神封は律令制における食封制度の一環として成立したと考えられています。具体的には、神封は律令制度下で、官人に与えられる位封と同様のものが神社にも与えられたものです。しかし、養老令などには直接的な規定はなく、『令集解』の注釈にその存在が示されているにすぎません。そのため、神封に関する規定は、太政官符や太政官牒によって定められていました。

神封の税制

当初、神封戸は賦役令の封戸に関する規定により、庸調と課役のみを負担し、田租の半分は神社へ、残りは国家に納めていました。しかし、天平11年（739年）に封戸の租は全て封主（この場合は神社）に納めることとなり、税制面での神戸との違いはなくなりました。また、この頃から神社に対しても、官人と同じように位階を授け、位封を支給する制度が始まりました。位階に応じた位封が神社にも与えられ、これも神封として扱われました。ただし、『続日本紀』の記録によると、必ずしも全額が支給されていたわけではなかったようです。

神封と神戸の混同

平安時代初期になると、実質的な差異が失われた神戸と神封は混同されるようになり、同一のものとして扱われるようになりました。『新抄格勅符抄』に収録されている大同元年（806年）の太政官牒では、両者が一括して扱われており、この頃には両者が事実上同一のものと見なされていたと考えられています。

まとめ

神封は、律令制のもとで神社に与えられた封戸であり、神社の運営を支える上で重要な役割を果たしました。成立当初は神戸とは異なる点もありましたが、時代とともにその差異は失われ、両者は混同されるようになりました。神封は、古代日本の社会制度や宗教制度を理解する上で、重要な概念の一つです。

参考文献

水野柳太郎「神封」（『国史大辞典 7』吉川弘文館、1986年）ISBN 978-4-642-00507-4
時野谷滋「神封」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）ISBN 978-4-040-31700-7

関連項目

他神（あたしがみ）
天社（あまつやしろ）
神地（かむどころ）
神部（かむべ）
國社（くにつやしろ）
神戸（じんこ、かんべ）

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