新沢千塚古墳群

新沢千塚古墳群：古代日本の謎を秘めた巨大古墳群

奈良県橿原市北越智町と川西町に広がる新沢千塚古墳群は、600基を超える古墳が密集する巨大な群集墳です。東西2キロメートル、南北約2キロメートルにわたる越智岡丘陵（標高約150メートル）に点在し、それぞれの古墳の大きさは直径10～15メートルほどの円墳が中心です。4世紀末から7世紀にかけて造られたと推定されており、特に5世紀半ばから6世紀末にかけて盛んに築造されました。かつては「川西千塚」や「鳥屋千塚」とも呼ばれていました。

発掘調査と貴重な出土品

新沢千塚古墳群の発掘調査は1947年から開始され、1962年には本格的な調査が実施されました。この調査では、粘土槨を内部主体とする500号墳（前方後円墳）を含む23基の古墳が調査され、古墳時代前期の副葬品が出土しました。なかでも注目すべきは、珍しい懸垂鏡を含む副葬品です。

1960年代には同志社大学などによる調査も行われ、約130基の古墳が調査されました。これらの調査で、武具や馬具などの副葬品が数多く出土しましたが、最も重要な発見は5世紀後半の126号墳からの出土品でした。126号墳からは、金、銀、ガラス、ヒスイなどを使った豪華な装飾品が、遺骨に装着されたままの状態で見つかりました。特に注目すべきは、日本で初めての出土例となる火熨斗（ひのし）と、中国を経由せず西域から新羅経由で伝わったと推測されるローマンガラス製品です。

2014年には、東京理科大学の阿部善也氏らの研究により、126号墳から出土したガラス皿の化学組成が、ローマ帝国領内で出土したローマ・ガラスとほぼ一致することが蛍光X線分析によって確認されました。これは、日本国内の古墳から出土したガラス器がローマ帝国伝来であることを裏付ける初めての事例となりました。

126号墳から出土したこれらの貴重な遺物は、東京国立博物館に保管されており、一括して国の重要文化財に指定されています。これらの発見は、新沢千塚古墳群が当時、国際的な交易ネットワークに深く関わっていたことを示唆しており、古代日本の歴史研究において非常に重要な意味を持っています。

史跡公園としての整備

新沢千塚古墳群は、その歴史的価値から国の史跡に指定され（1976年）、現在では史跡公園として整備が進められています。「新沢千塚古墳群公園整備事業」は2012年から開始され、2018年現在も継続中です。公園は北側の北群公園と南側の南群公園に分かれ、園路や広場、展望台、遊具、ビオトープ、カフェなどが整備され、歴史と自然を満喫できる空間となっています。公園内には、歴史に憩う橿原市博物館、シルクの杜、新沢千塚ふれあいの里、OTENKIテラスなどの施設もあります。

まとめ

新沢千塚古墳群は、その規模、出土品の豪華さ、そして国際的な交流の痕跡など、多くの謎と魅力を秘めた古代日本の貴重な遺跡です。史跡公園として整備された現在、多くの人がその歴史に触れ、古代日本のロマンを感じることができる場所となっています。今後も継続的な調査と研究によって、さらに多くの事実が明らかになることが期待されています。

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