新聞紙法

新聞紙法：戦前日本の言論統制と新聞出版の規制

1909年（明治42年）に制定された新聞紙法は、日本の新聞と定期刊行物の発行を厳しく規制した法律でした。45条と附則から成るこの法律は、帝国議会の議員立法として成立しましたが、実際にはそれまでの新聞紙条例を踏襲するものでした。太平洋戦争後の1949年（昭和24年）に廃止されるまで、日本の言論環境に大きな影響を与えました。

制定と成立

新聞紙法の制定は、帝国議会開設後の民権派議員による長年の努力の結実でした。何度も法案提出が繰り返された後、新聞界出身の議員らによる法案が最終的に可決、公布されました。しかし、その過程では政府との政治的駆け引きもあり、新聞発行の禁停止処分に関する規定などが盛り込まれる結果となりました。

法律の内容と検閲の強化

新聞紙法は、新聞記事の内容に関する様々な規制を定めていました。特に注目すべきは、以下の点です。

保証金制度: 時事問題を取り扱う新聞は、高額な保証金を納付する必要がありました。これは、新聞社の活動を経済的に抑制する効果がありました。
反論掲載義務: 記事内容の関係者から反論があれば、それを掲載する義務がありました。これは、言論の多様性を確保する側面もありましたが、同時に、批判記事の掲載を抑制する効果も持っていました。
予審記事の制限: 裁判前の予審に関する記事の掲載には、厳しい制限がありました。これは、司法手続きへの介入を避ける狙いがありました。
掲載禁止事項: 犯罪を煽動する記事、治安や風俗を害する記事、軍事・外交に関する機密事項などは、掲載が禁止されていました。

これらの規定は、政府による情報統制を容易にするものでした。特に、軍部や政府の意向に沿わない記事は、容易に掲載禁止に処することができました。

戦時体制下での強化と新聞統制

1938年の国家総動員法の制定に伴い、新聞紙法はさらに強化されました。軍事・外交に関する事項だけでなく、一般治安や財政金融に関する事項についても、政府による統制が可能となりました。情報局の設置により、新聞への政府の介入はさらに強まりました。

関連事件

新聞紙法は、多くの事件に関連しています。例えば、幸徳秋水事件や白虹事件など、政治的な事件の報道は、この法律によって厳しく規制されました。政府批判的な報道は、容易に検閲の対象となり、掲載が禁止されることもありました。

廃止

太平洋戦争の終結後、GHQ（連合国軍最高司令官総司令部）は、新聞・言論の自由に関する覚書を発出し、新聞紙法は事実上効力を失いました。その後、内務省の解体、国家公安委員会への移管を経て、1949年に正式に廃止されました。

新聞紙法の意義と影響

新聞紙法は、戦前日本の言論環境を規定した重要な法律でした。政府による検閲や情報統制を可能にする一方で、表現の自由を大きく制限しました。この法律は、戦後の日本の民主化、言論の自由の確立にとって重要な転換点となりました。現代においても、新聞紙法の制定とその廃止は、民主主義と情報公開、そして言論の自由の重要性を再考する上で、貴重な歴史的教訓となっています。

関連事項

出版法
無線電信法
放送禁止事項
不穏文書臨時取締法
言論、出版、集会、結社等臨時取締法
治安維持法
記事差止命令
日本における検閲
戦前・戦中期日本の言論弾圧
SCAPIN
* 新聞法

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