新道野越

新道野越（しんどうのごえ）

新道野越は、国道8号に位置する福井県と滋賀県の県境に跨る峠で、別名「新深坂越」とも呼ばれています。この峠は江越国境越えのルートの一つであり、交通の要衝として重要な役割を果たしてきました。

概要

この峠の標高は260メートルであり、敦賀富士とも称される野坂岳の914メートルとともに、野坂山地を越える数少ない道の一つとして知られています。国道161号が敦賀市疋田で分岐し、こちらは滋賀県高島市へと続きます。一方、国道8号は長浜市に向かっており、ここは湖北および湖西の北端に位置する交点とも言えます。新道野越の地下には、北陸本線の深坂トンネルが通っています。このトンネルと峠は、地域の交通網において重要な役割を持っています。

歴史

中世以降、商品の流通の増加に伴い、北国街道の重要性はますます高まりました。特に、琵琶湖の湖上輸送は、京阪方面と北陸方面を結ぶ大切な手段でした。しかし、古代から使われていた深坂越えは難所とされていたため、天正8年（1580年）には新たに東側に新道野越が開かれました。日本海側から敦賀に運ばれた荷物は、新道野越や西近江路のルートで琵琶湖の北端や西岸にある中継港に送られていました。

なお、峠の近くには芭蕉の句碑があり、近江商人の中継問屋であった新道地区の西村家には、「奥の細道素龍清書本 附 細道伝来記」が国の重要文化財として伝わっています。この西村家は1964年に旅行会社が手掛けるドライブインの運営を始め、1973年には滋賀県から古民家を移築して峠の茶屋を設立し、「民芸茶屋 孫兵衛」として独立しました。

この茶屋では、芥川龍之介が『芋粥』の物語で取り上げた山芋が名物として親しまれ、とろろそばが特に人気でした。しかし、2023年11月末をもって閉店することが発表されています。

峠付近の施設と交通

新道野越の周辺には、敦賀警察署疋田検問所、疋田スノーベース、新疋田駅、そして深坂古道といった施設や交通路が点在しています。峠からの主な接続路線には、国道161号（疋田交差点）、福井県道・滋賀県道140号敦賀柳ヶ瀬線（麻生口交差点）、滋賀県道286号大浦沓掛線（沓掛交差点）があります。

このように新道野越は、地域の歴史や文化と深く結びついた重要な峠であり、今もなお多くの人々に利用され続けています。

もう一度検索