新郷貝塚

新郷貝塚：縄文時代の息吹を感じる遺跡

新郷貝塚は、埼玉県川口市東貝塚に位置する縄文時代後期の貝塚・環状集落の遺跡です。1923年（大正12年）に埼玉県指定史跡となり、その歴史的価値が認められています。

概要

新郷貝塚は、川口市内で最大規模を誇り、当時の原形を留める数少ない遺跡として知られています。遺跡は、東側から入り込む谷の最奥部を囲むように存在し、A・B・C・Dの4地点の貝塚が馬蹄形を形成しています。東西約120メートル、南北約150メートルの広がりを持ち、特にA地点貝塚では1メートル以上の貝層の堆積が確認されています。

各地点の特徴

A地点

A地点は、新郷貝塚の中で最も規模が大きく、東西約25メートル、南北約78メートルの広さを持ちます。中心部の広場を囲む三日月状の形状が特徴的で、貝層は厚さ1メートル以上に達しています。1927年（昭和2年）には秩父宮台臨を記念する石碑が建てられました。過去の数回の発掘調査では、竪穴建物や縄文人の骨が発見されています。

B地点

B地点は、A地点の東側に位置し、新郷貝塚の中で最も南に位置します。馬蹄形貝塚の東側先端部分にあり、東西約50メートル、南北約30メートルの広さです。貝の散布はA地点に比べてまばらで、貝層の厚さも薄くなっています。A地点との標高差は約1メートルあり、A地点の隆起が確認できます。

C地点

C地点は、新郷貝塚の中で最も北に位置します。台地の縁辺部から斜面部にかけて形成された小規模な貝塚で、東西約10メートル、南北約20メートルの広さです。1985年（昭和60年）の保存整備のための発掘調査で、崖線下のローム平坦面から竪穴建物や小竪穴が発見され、縄文時代の生活の舞台が台地上だけでなく、低湿地に面する台地下にも広がっていたことが示唆されました。

D地点

D地点は、C地点と同様に台地の縁辺部から斜面部にかけて形成された小規模な貝塚と考えられています。C地点と隣接しており、一体となっている可能性もあります。詳細な調査は行われていないため、規模は不明です。

発掘史

新郷貝塚では、1893年（明治26年）に鳥居龍蔵による調査が行われたのをはじめ、1927年（昭和2年）の秩父宮台臨、1931年（昭和6年）の県史編さん事業、1933年（昭和8年）の東京帝国大学医学部解剖学教室による発掘調査など、数多くの調査が実施されてきました。これらの調査により、3軒の建物跡と伸展葬3体を含む5体の人骨が検出され、縄文時代後期の土器や土製品、石器類、貝輪などが出土しました。

出土品

新郷貝塚からは、以下のような多様な遺物が出土しています。

土製品：堀之内式土器、加曽利B式土器（加曽利B1・B2式）、安行式土器（安行Ⅰ・Ⅱ式、晩期安行Ⅲa～Ⅲc式）、土錘、土版、土偶、耳飾
石製品：石鏃、石斧、石皿、石棒、凹石
骨角牙製品：垂飾
貝製品：貝輪、貝刃
* 自然遺物：ヤマトシジミ、セタンシジミ、オキシジミ、ハマグリ、ハイガイ、サルボウ、シオフキ、サザエ、アカニシ、カガミガイなどの貝類、シカ、イノシシ、イヌ、クジラなどの獣骨類、魚骨類、鳥骨類、人骨

現況

現在、新郷貝塚は新郷若宮公園として整備され、市民の憩いの場となっています。遺跡を訪れることで、縄文時代の生活や文化に触れることができます。

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