施設作業車

施設作業車（しせつさぎょうしゃ）

はじめに

陸上自衛隊の装備品の一つに、特殊な機能を持つ装甲車両が存在します。それが「施設作業車」です。この車両は、一般的な戦闘車両とは異なり、土木作業や陣地構築といった工兵任務に特化して設計された、いわゆる装甲工兵車両に分類されます。

開発背景

本車両は、陸上自衛隊で運用されていた75式ドーザの後継装備として開発されました。また、既存の73式けん引車の車体をベースとした派生型であり、共通部品が多く利用されています。

設計と機能

施設作業車の特徴は、その多機能性です。車体前部に大型のドーザーブレードを備え、排土や整地作業を行います。さらに、伸縮式のショベルアームを装備しており、これにより、従来のブルドーザー作業に加え、戦場での工兵作業に対応できます。障害物の除去、陣地の構築、特に塹壕や掩体壕といった防御構造物の掘削を効率的に行えます。ショベルアーム操作は搭乗員による手動のほか、コンピューター制御による自律作業も可能です。事前に設定された手順に従い、自動で塹壕や掩体壕の掘削・構築を行える高度な機能です。

防御能力

攻撃用の火器は一切搭載していません。しかし、最前線での作業を考慮し、対戦車ミサイルなどの脅威に対抗するため、自己防御能力を備えています。飛来するミサイルを探知するレーザー検知機と、敵からの視察や攻撃を回避する76mm発煙弾発射機（4連装）を車体左右に1基ずつ、合計2基搭載しています。

配備状況

施設作業車は、1999年度（平成11年度）から部隊への配備が始まりました。しかし、生産数は合計で13両と少数に留まりました。主な配備先は、施設学校、教育支援施設隊、北部方面隊の施設科部隊や戦車連隊本部管理中隊などです。本車両は75式ドーザの後継となるはずでしたが、少数生産のため置き換えが進まず、これらの旧式ドーザをまとめて更新するため、より高性能で装甲強化された後継装備である23式ドーザが開発されました。

主要諸元

施設作業車の主要な性能諸元は以下の通りです。

全長：8.88メートル
全幅：3.77メートル
全高：2.77メートル
重量：28.6トン
最高速度：時速50キロメートル
乗員：2名
製作：小松製作所、日立製作所（車体）

メディアでの登場

施設作業車は、フィクション作品にも登場しています。

『戦国自衛隊1549』
小説版に登場。戦国時代にタイムスリップした部隊の装備として、大規模な穴掘削に使用されます。

* 『超空自衛隊』
第二次世界大戦時にタイムスリップした施設科部隊の貴重な装甲車両として活躍。ショベルアームやドーザーブレードを戦闘に活用したり、鹵獲した機関銃を搭載する描写も。

関連情報

施設作業車に関連する項目として、「陸上自衛隊の装備品一覧」や「戦闘工兵車」があります。

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