旅路の果て (アルバム)

旅路の果て（Clutching at Straws）

イギリスのプログレッシブ・ロックバンド、マリリオンが1987年に発表した『旅路の果て』は、彼らにとって4作目のスタジオアルバムです。本作は1979年に結成されたマリリオンの独特の音楽スタイルを体現した作品であり、バンドのボーカリストであるフィッシュ（デレク・ディック）が在籍中にリリースした最後のアルバムとしても知られています。

アルバム制作の背景

アルバムの制作は1986年5月に始まり、バンドはラッシュの北米ツアーを終えた後に曲作りに取り組みました。クリスマスには「ホワイト・ロシアン」や「さらば青春の光」といった新曲をライブ演奏することができましたが、レコーディングは1987年に入ってから始まりました。しかし、フィッシュはツアーの日程が決定したため、制作はプレッシャーの中で進められることになりました。「我々はまだいくつかの曲をまとめなければならなかった段階だった」とフィッシュは述べています。

さらに、アルバムのカバーアートにも苦労が伴いました。ジャケットデザインを担当したマーク・ウィルキンソンは、過去の作品とは異なるアプローチを試みて、イラストと写真を組み合わせたデザインを制作しましたが、メンバーの反応は芳しくなかったと語りました。「殆どモノトーンの、もっとダークな雰囲気を作りたかった」と振り返るウィルキンソンの言葉には、当時の苦悩がうかがえます。

アルバムの特徴とテーマ

本作は、一般的にはコンセプトアルバムとして考えられることが多いですが、マーク・ケリーはその認識に対して疑問を投げかけています。彼は、本当の意味でのコンセプトアルバムは1985年発表の『過ち色の記憶』のみであると主張しています。このように、マリリオンの音楽的なアイデンティティは常に変化し続けているのです。

反響と評価

『旅路の果て』は発表後すぐに成功を収めました。1987年7月4日付の全英アルバムチャートでは初登場2位にランクインし、その後も15週間の間チャート内に留まりました。先行シングルの「さらば青春の光」は全英シングルチャートで6位に達し、その後シングルカットされた「雨にうたれるシュガー・マイス」と「ウォーム・ウェット・サークルズ」も良い成績を収めました。

アメリカではBillboard 200で103位に達し、「さらば青春の光」はメインストリーム・ロック・チャートで24位という結果を残しました。音楽評論家John Franckはオールミュージックでこのアルバムに高い評価を与え、フィッシュの歌詞に込められた深い感情とその表現力を称賛しました。

リマスター版とボーナスディスク

1999年にリリースされたリマスターCDには、12曲入りのボーナスディスクが付属し、1988年に制作された未発表曲も収録されています。これにより、マリリオンの音楽的遺産がさらに充実しました。特に、未発表曲のアイデアは後のアルバムにも使用されており、フィッシュのソロ活動にも影響を与えています。

収録曲

アルバムの収録曲は以下の通りです。すべてフィッシュとバンドメンバーの共作によるものです。

1. ホテル・ホビーズ - "Hotel Hobbies" (3:35)
2. ウォーム・ウェット・サークルズ - "Warm Wet Circles" (4:25)
3. 夜の孤独な時間 - "That Time of the Night (The Short Straw)" (6:00)
4. ゴーイング・アンダー - "Going Under" (2:47)
5. ジャスト・フォー・ザ・レコード - "Just for the Record" (3:09)
6. ホワイト・ロシアン - "White Russian" (6:27)
7. さらば青春の光 - "Incommunicado" (5:16)
8. トーチ・ソング - "Torch Song" (4:05)
9. スランジェ・バー - "Slàinte Mhath" (4:44)
10. 雨にうたれるシュガー・マイス - "Sugar Mice" (5:46)
11. 最期の望み - "The Last Straw / Happy Ending" (5:58)

このアルバムは、プログレッシブ・ロックの要素を色濃く反映した作品で、フィッシュの独特な歌詞と感情豊かなボーカルが聞く者の心に深く響くものとなっています。

もう一度検索