過ち色の記憶

過ち色の記憶（Misplaced Childhood）

『過ち色の記憶』は、イギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、マリリオンが1985年に発表したアルバムです。この作品は、バンドのフロントマンであったフィッシュの個人的な経験を基にしたコンセプト・アルバムであり、音楽的だけでなく、メッセージ性においても深いものがあります。

背景

アルバムの制作にあたってフィッシュは、作家ヘルマン・ヘッセの小説『デミアン』から強い影響を受けています。この小説がフィッシュのアイデア形成にどのように寄与したかは、彼の歌詞や楽曲のテーマにも反映されています。また、アルバムジャケットはアーティスト、マーク・ウィルキンソンの手によって描かれ、隣家の10歳の少年ロバート・ミードがモデルとされています。この少年の姿は、フィッシュの心の中にあったデミアンのイメージそのものであるとウィルキンソンは語っています。

レコーディング

1985年2月にデモが録音され、これらのデモは1998年にリリースされたリマスターCDのボーナスディスクに収められています。レコーディングプロデューサーのクリス・キムゼイは、ピーター・フランプトンやローリング・ストーンズの作品にも携わった実績があり、マリリオンの音楽を全体として捉えることに重きを置いていました。バンドのベーシスト、ピート・トレワヴァスは、キムゼイが個々のメンバーの完璧な演奏よりも全体の雰囲気を重視していたことから、スピリチュアルな作品に仕上がったと述べています。

興味深い点として、スティーヴ・ロザリーによれば、レコーディング前にスタジオを使ったキリング・ジョークの影響で、ミキシング・デスクの調子が悪化したというエピソードもあります。このような困難を乗り越え、アルバムは完成を見ました。

反響と評価

『過ち色の記憶』は商業的に大きな成功を収め、イギリスのアルバムチャートで1位を獲得し、41週にわたりチャート圏内に留まりました。ドイツでは3位に到達し、アメリカのBillboard 200でも47位を記録しました。シングル「追憶のケイリー」は全英で2位、全米で74位に達し、その後も「ラヴェンダー」や「ロシアンの心」といったシングルがヒットしました。

評論家の評価も高く、オールミュージックのJohn Franckは、このアルバムをバンドの中で最も完成度が高く、合理的な作品と評価しました。また、ドリーム・シアターのギタリスト、ジョン・ペトルーシは2012年に本作を「プログレッシブ・ロックの名盤」として挙げ、マリリオンの音楽の本質を語っています。

ライヴ演奏

このアルバムは、マリリオンのライヴパフォーマンスでも完全再現され、1988年リリースのライヴアルバム『伝説への序章』に全曲が収録されました。また、リリースから20周年を記念して行われた2005年のフィッシュのツアーでもアルバムが再現され、ライヴアルバム『Return to Childhood』に記録されています。

収録曲

全曲は全メンバーの共作で、以下のトラックが含まれています：
1. 絹の着物 (Pseudo Silk Kimono) - 2:13
2. 追憶のケイリー (Kayleigh) - 3:54
3. ラヴェンダー (Lavender) - 2:33
4. ビター・スイート (Bitter Suite) - 7:53
5. ロジアンの心 (Heart of Lothian) - 4:08
6. 隠された陰謀 (Blind Curve) - 9:29
7. 少年時代の終焉 (Childhood's End?) - 4:32
8. ホワイト・フェザー (White Feather) - 2:23

本作は、マリリオンの音楽的成長を示す重要な作品であり、今なお多くのファンに愛され続けています。

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