族誅

族誅（ぞくちゅう）とは

族誅（ぞくちゅう）または族滅（ぞくめつ）とは、前近代社会において、重大な犯罪を犯した者の一族にまで死罪を及ぼす刑罰のことです。特に、王権に対する反逆やクーデター未遂など、国家の根幹を揺るがす罪に対する刑罰として用いられました。

概要

「誅」という言葉は、本来、皇帝が直接行う死刑を意味し、上位者が下の者を罰する行為を指します。古代中国においては、皇帝が正当な賞罰を行うことが理想とされ、その権限の一部として誅殺が行われていました。しかし、皇帝の判断が常に正しいとは限らず、権力者や寵臣が私怨で政敵を陥れるために、無実の罪で誅殺が行われることもありました。

族誅は、単なる死刑ではなく、罪人の一族を根絶やしにすることで、その血統を断ち切ることを目的としていました。古代中国の死生観では、子孫がいない者は黄泉で飢え苦しみ、祟り神になると信じられていたため、子孫を絶やすことは最大の刑罰であり、同時に禁忌でもありました。

歴史

族誅の歴史は古く、殷の時代から存在したとされます。戦国時代に制度として確立し、中国を中心に東アジア各地で行われました。中国以外では、朝鮮、ベトナム、日本などの封建国家で見られ、20世紀のソビエト連邦でも粛清の一環として行われました。

中国

中国では、秦の時代に最も盛んに行われました。罪の種類に関わらず、家族単位で処罰されることがありました。漢代になると連座刑は廃止されましたが、謀反罪だけは残りました。時代が下るにつれ、宗教的な意味合いは薄れ、未成年者や女性は死刑の代わりに官奴隷にされたり、流刑に処されたりするようになりました。

日本

日本では、『魏志倭人伝』に族誅に類似する記述が見られます。明確な記録としては、『日本書紀』に雄略天皇の時代に豪族が謀反を企てて一族皆殺しにされたという記述があります。戦国時代には、織田信長が武田氏を滅亡させた際、残党狩りとして一族を徹底的に処刑しました。江戸時代には、主君殺しや御家騒動の首謀者に対して縁座という形で親族が処罰されました。

西洋

西洋でも、アッシリア帝国やアケメネス朝ペルシア帝国で族誅が行われていた記録があります。古代ギリシャ、ローマでは、家父長制に基づき、子女の生命は家父長の隷属物と見なされていました。家父長が国家の敵と認定された場合、その子女も法的権利を剥奪され、殺害されたり奴隷にされたりすることがありました。

近現代

近現代では、ソビエト連邦のスターリンによる大粛清や、ナチスドイツによる占領地のレジスタンス運動に対する報復として、族誅が行われました。北朝鮮では、近年でも族誅が行われている疑いがあります。

族誅の対象

族誅の対象となる範囲は、時代や地域によって異なります。一般的には、父、兄弟、妻子などの直系親族が対象とされていました。しかし、場合によっては、叔父、甥、姪などの傍系親族や、姻族まで含まれることもありました。

現代における族誅

現代では、人道上の問題から、ほとんどの国で族誅は廃止されています。しかし、一部の国では、政治的な目的で、あるいは報復として、族誅が行われている疑いがあります。

関連項目

連座
根切り
* ジェノサイド

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