日下部与市

日下部与市 - 略歴と業績

日下部与市（くさかべ よいち、1928年 - 1975年）は、日本の会計学界において重要な役割を果たした会計学者である。東京都に生まれ、早稲田大学の政治経済学部を卒業後、1967年には「財務諸表監査の基礎理論」により商学博士の学位を取得した。彼は主に早稲田大学商学部で助教授および教授として活躍し、学生たちに多くの知識を伝えた。

日下部は、46歳で白血病により亡くなるまで多くの研究と教育に従事しており、彼のゼミからは著名な人物が輩出された。特に、政治家の吉野正芳や会計学者の鳥羽至英などがその例である。彼の指導の下、多くの学生たちが会計学の分野で成功を収めている。

著作物

日下部与市は著名な著書を数多く発表しており、その内容は会計学及び監査に関する広範な知識を網羅している。代表的な著書には、1958年に発表した『財務諸表監査』や、1962年と1965年に改訂が行われた『会計監査詳説』がある。また、1966年には『新会計監査詳説』を発表し、1975年にはその全訂版が出版された。これらの書籍はしばしば会計の実務や教育において基本的な参考資料として使用されている。

さらに、日下部は『やさしい簿記』や『簿記の基礎』などの教材も執筆し、会計学の基礎を学ぶ若者たちに重要な影響を与えた。彼の著書は特に日本の会計基準や国際的な会計手続きに関する理解を深めるための貴重な資源となっている。また、監査に関する理論と実務を詳述した『監査基準逐条詳解』や、『厳選監査論問題演習』も多くの専門家にとって重要な参考資料となっている。

共著と翻訳

日下部は単著だけでなく、複数の共著や翻訳書も手掛けており、たとえば、辰巳正三との共著による『監査報告書の実務 文例を中心として』や、山桝忠恕との共著による『監査論』などがある。これらの書籍は、実務重視の内容であり、業界関係者にとって非常に有益である。

また、日下部は、海外の会計実務に関する翻訳書である『海外の会計と監査実務 アメリカ・イギリス・カナダの実務慣行』も出版しており、国際的な視点からの会計学の理解を促進している。共訳ではラトレッジの著作『中間決算報告書論』を訳している。

影響と遺産

日下部与市の業績は、会計学の発展に大きな影響を与えただけでなく、彼の研究は日本の企業会計や監査の基準にも影響を与えたと考えられている。彼の死後も、彼が残した知見や教育方針は多くの後進に受け継がれ、今なお会計学界における重要な遺産となっている。また、彼の業績は後の研究においても多く取り上げられており、会計学のさらなる進歩に寄与している。

日下部与市の人生は短かったが、彼の情熱と行動は日本の会計学界において永遠に記憶され続けることであろう。

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