日下部氏 (日向国)

日下部氏の歴史と系譜

日下部氏（くさかべし）は、日向国における著名な社家および武家の一族で、特に都萬神社の宮司家として知られています。その起源は古く、平安時代には日向国児湯郡の荘園を管理していたとされています。一族は鎌倉時代の前期まで活動しており、その影響力は広範囲にわたりました。

出自と系図

日下部氏には多くの系図が残されていますが、これらの中には気をつけるべき歴史的な矛盾が存在することが指摘されています。14世紀に編纂された『都萬大明神之御縁起』や「日下部氏家系」とされる文書によれば、庚午年の11月19日に男女が土中から出現し、それが日下部氏の祖である立次だと伝えられています。平林章仁氏は、この庚午年は天智天皇9年（670年）との関連を示唆しています。

また、日下部氏の伝承には、土から出現するという神話が含まれています。これは日向地方に特有の文化的要素として認識されています。系図によると、立次から始まり、直系の子孫はそれぞれの神社に240年、子は180年、そして三代目は194年仕えていたと記されています。三代目の野長は『万葉集』にも名前が見えるものの、系図には矛盾が存在し、上総国の防人としての記録があり、これに基づいて日下部氏が自己の祖先を名乗った可能性について考察されています。これに対し、西都市史編纂委員会は、彼らが『万葉集』の歌人を自慢していたために系図に取り込まれた可能性があると述べています。

歴史的背景

日下部氏の活動は、承和4年（837年）にはすでに文書に記録されています。この際、日下部道長という弁官や田部秀長、秀誠といった人名が見られます。また、貞観8年（866年）には日下部清直が従七位下の位階を授かる記録もあります。そのため、清直が属していた階層は郡領を輩出する層だったと考えられており、彼が一定の功績を上げたことが示唆されています。

系図に名を連ねる日下部久仲は、さらに進んで白河院に仕官し、後に土持則綱に嫁いだとされます。久仲の子孫は久貞となり、彼は保安4年（1123年）には日向国国司となり、日下部宿禰を名乗りました。久貞の次男尚守も同様に国司職を務め、その弟は法亢氏の祖となる立信とされています。

その後、尚守の子には盛平と盛俊がいて、国司の地位は盛平に引き継がれました。文治3年（1187年）には、盛平が子孫のために土持冠者栄妙を養子として所領を譲る記録が残っています。盛平の兄弟の盛俊は複数の郡司職をつかさどり、子孫としては初代那賀南五郎が薄田郡司を兼任していたことでも知られています。

弘安4年（1281年）には、元寇の際に盛俊の子孫である宣景が戦に出陣し、大きな戦果を挙げましたが、残念ながら肥前国鷹島で討死してしまいました。日下部氏は長い歴史を持ち、今もなおその伝承が地域の文化に根付いています。

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