日下部金兵衛

日下部金兵衛の生涯と業績

日下部金兵衛（くさかべ きんべえ）は、1841年に甲斐国（現在の山梨県甲府市）で生まれた日本の写真家です。彼は、その業務の大半を外人顧客を対象に行っていたため、名字よりも発音しやすい「金兵衛」という名前を仕事上で使用することが多かったようです。

初期の経歴

金兵衛は1863年頃より、横浜にてフェリーチェ・ベアトのスタジオで写真の着色技師として活動を開始しました。1867年にはベアトの弟子として上海にも出かけ、様々な撮影を行いました。しかし、ベアトが写真界から退いた後は、別の弟子であるライムント・フォン・シュティルフリートのもとでさらなる研鑽を積みました。

1881年には独立し、横浜の弁天通で「金幣写真」というスタジオを開設。この独立直後は「写真商」と名乗っていましたが、数年後には「写真家」と改名し、より専門性を強調しました。やがて本店は1890年頃に本町通1丁目7番に移転し、芝や銀座にも支店を展開しました。

写真作品の特徴

金兵衛は、十分な技術と独自の視点を持つ写真家として知られ、特に外国人観光客向けに販売される「横浜写真」として知られる作品群を手掛けました。1885年頃、ベアトやシュティルフィールト、および内田九一のネガを引き継いでおり、これらの作品の中には外国人向けのセミヌード写真も含まれていました。さらに、長崎の有名な写真家上野彦馬のネガも継承し、新たな作品づくりに役立てていました。

1891年には濃尾地震の際に著名な写真を撮影したと言われており、これは後に地質学的な研究に利用されました。また、1904年のセントルイス万国博覧会にも作品を出展し、その技術が国際的に認められる機会となりました。

金幣アルバム

彼の残したアルバムは主にアコーディオン方式で製作され、美しい螺鈿細工や蒔絵の表紙を施した豪華なデザインが特徴です。「金幣アルバム」としても知られ、多くの人々に親しまれています。1912年に写真業界から引退し、金幣写真館も2年後に営業を終了しました。

晩年と死去

晩年には日本画に専念し、1932年に神戸市内にある孫の家で92歳で亡くなりました。彼の遺体は横浜市の久保山霊堂に埋葬されました。

影響と評価

金兵衛の活動は写真界において非常に重要であり、彼の作品は明治時代におけるカラー写真の発展に寄与しました。中村啓信による著書『明治時代カラー写真の巨人 日下部金兵衛』は、彼の業績を詳しく記録し、その才能を称える内容となっています。彼の写真は、今でも多くの人々に愛され、評価されています。

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