日光田母沢御用邸記念公園

日光田母沢御用邸記念公園：大正天皇ゆかりの歴史と自然が息づく空間

日光市中心部、神橋から大谷川を遡ること約1km。雄大な自然に抱かれた場所に、日光田母沢御用邸記念公園はあります。この公園は、かつて皇太子であった大正天皇の静養所として明治32年(1899年)に造営された旧御用邸とその庭園を、一般公開するために整備したものです。

明治・大正期の建築様式が融合した貴重な歴史遺産

御用邸の建物は、すべてが同時に建てられたわけではありません。元々は当地にあった資産家の別荘を再利用し、さらに東京・赤坂の東宮御所から移築された建物（江戸時代の建築を含む）も組み込まれています。大正天皇の即位後には大規模な増築も行われ、江戸、明治、大正と異なる時代の建築様式が混在する、他に類を見ない貴重な建造物群となっています。これらの建物は、明治期以降に数多く造られた御用邸建築の中でも、全体がほぼ完全に現存する唯一の例として、高い歴史的価値を有しています。2013年には、10棟の建物が国の重要文化財に指定されました。

敷地と建物の規模

御用邸時代には107,000㎡もの広大な敷地を有していましたが、現在は39,390㎡に縮小されています。それでも、106室もの部屋と4,471㎡の床面積を誇る、壮大な規模を誇ります。

御用邸の変遷：静養所から疎開先へ

御用邸の建設は、病弱であった皇太子嘉仁親王（後の大正天皇）の夏の静養所を設ける目的で行われました。明治29年(1896年)から用地の買収交渉が始まり、翌年には日光が静養地として選定されました。地元の銀行家、小林年保の別邸を再利用し、赤坂離宮からの移築なども行いながら、明治32年(1899年)に完成しました。

大正天皇即位後も、健康状態の悪化に伴い、御用邸は何度か増改築されました。大正8年(1920年)に大規模な増改築が完了し、その後、大正天皇の崩御後も昭和天皇や香淳皇后の避暑地として利用されました。太平洋戦争中には、皇太子であった明仁親王（現上皇）の疎開先としても重要な役割を果たしました。終戦後は大蔵省の管理下に入り、昭和22年(1947年)から栃木県観光協会により一般公開されるようになり、日光国立公園博物館として運営される期間もありました。2006年に栃木県が国から御用邸を取得し、2010年に「日光田母沢御用邸記念公園」として開園しました。上皇ご夫妻も来訪し、思い出を語られました。

見どころ：歴史と文化が息づく空間

公園内には、重要文化財に指定された10棟の建物のほか、広大な庭園も広がります。御座所、御食堂、皇后御座所など、それぞれの建物には、大正天皇や皇后の生活をしのばせる数々の調度品や建築様式が見られます。赤坂離宮から移築された江戸時代の建物や、明治・大正時代の増築部分など、時代の流れを感じさせる建築様式の変化も興味深いところです。

特に、御座所や御学問所などの主要な部屋は、和洋折衷のインテリアが特徴的で、当時の暮らしを垣間見ることができます。また、庭園では四季折々の花々が咲き誇り、美しい景観を創り出しています。

アクセスと情報

公園へのアクセスは、日光駅・東武日光駅から東武バス日光の路線バスが便利です。「日光田母沢御用邸記念公園」バス停が最寄りのバス停となります。公園の向かいには有料駐車場も完備されています。

日光田母沢御用邸記念公園は、歴史と自然を満喫できる、日光観光の隠れた名所と言えるでしょう。貴重な歴史的建造物と美しい庭園を巡り、時の流れに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。現在も、一部の部屋は非公開ですが、それでも多くのエリアを自由に見学できます。特別な企画で非公開エリアが公開されることもありますので、公式ホームページで確認することをお勧めします。

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