日向方齊

日向方齊（ひゅうが ほうさい）

生涯

日向方齊は、1906年（明治39年）に山梨県で生まれ、1993年（平成5年）に86歳で亡くなった日本の実業家です。住友金属工業（現日本製鉄）の名誉会長を務め、第8代関西経済連合会会長としても活躍しました。新日鐵住金（現日本製鉄）の稲山嘉寛が「ミスター・カルテル」と呼ばれ協調路線を重視したのに対し、日向は市場経済に基づく競争哲学を貫き、政府の方針にも異を唱える姿勢を貫きました。

極貧の家庭に生まれた日向は、篤志家の森家の援助と奨学金を得て旧制東京高等学校から東京帝国大学法学部に進学。1931年に卒業後、住友合資会社に入社しました。1941年には小倉正恒の秘書官を務め、政治の裏側を垣間見る経験を積みました。その後、住友金属工業で企画課長などを歴任。終戦後の混乱期には、住金再建のため大胆な事業縮小と人員削減を断行しました。1953年には小倉製鋼との合併を実現し、住金は高炉を持つ銑鉄一貫体制を確立しました。さらに、和歌山製鉄所の建設を進め、世界有数の製鉄会社へと成長させました。

1962年に社長に就任すると、1965年の鉄鋼不況時には、通産省が提示した一律の減産プランに反対しました。当時の通産省との対立は、日向の反骨精神を象徴する出来事として知られています。その後、鹿島製鉄所の建設にも尽力し、住金の発展に貢献しました。1977年から1987年まで関西経済連合会会長を務め、そのリーダーシップを発揮しました。

大和銀行事件と住金事件

大和銀行事件

大和銀行事件では、大蔵省が信託業務を兼営する普通銀行に対して分離を求める行政指導をしていた中、大和銀行がこれに反発。日向は関西経済同友会代表幹事として、大和銀行を支持し、大蔵省の行政指導のやり方を批判しました。日向の主張は、法的根拠に基づかない行政指導は、私企業の経営を脅かすものであり、自由主義経済の原則に反するというものでした。この一件で、大蔵省はそれ以上の介入を断念し、大和銀行は信託業務を維持することができました。

住金事件

住金事件は、1965年の鉄鋼不況時に住友金属が和歌山に高炉建設を決定したことに端を発します。不況時の投資は将来の成長に不可欠であると考える日向に対し、業界は減産を主張。通産省は過去の市場占有率に基づいた減産プランを提示しましたが、住金はこれに反対しました。通産省は原料炭輸入の割り当てを削減するなど強硬な姿勢に出ましたが、日向は一歩も引かず、最終的に小林中や中山素平の仲介で事態は収拾しました。この事件を通じて、日向の反骨精神と自由主義経済への信念が広く知られることとなりました。

親族

妻は森家の長女であり、義兄弟には旭電機設立者の森太郎、慶應義塾大学教授の前田為可、旭電機社長の森光可がいます。長男は東芝の取締役を務めた日向宏太郎、その妻は二代目根津嘉一郎の長女である日向礼子です。長女は、元住友銀行専務取締役の小松健男に嫁ぎました。

脚注

勲一等旭日大綬章受章（1987年）
関西経済連合会会長（1977年 - 1987年）

関連項目

* 住友家評議員会

日向方齊は、その卓越した経営手腕と強い信念で、日本の経済界に大きな足跡を残しました。

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