小倉正恒

小倉正恒（おぐら まさつね）：激動の時代を駆け抜けた実業家・政治家

小倉正恒は、1875年（明治8年）に石川県金沢市で生まれ、1961年（昭和36年）に86歳で亡くなった、日本の実業家、政治家です。旧金沢藩士の家系に生まれ、東京帝国大学を卒業後、内務省に入省しましたが、後に住友財閥に転身し、その経営を担いました。また、第2次・第3次近衛内閣では国務大臣、大蔵大臣を歴任するなど、政治の世界でも重要な役割を果たしました。

生い立ちと住友財閥への転身

小倉正恒は、前田利家の家老の家系である旧金沢藩士・小倉正路の長男として生まれました。第四高等学校を経て、東京帝国大学英法律学科を卒業後、内務省に入省し、土木監督署事務官となりました。しかし、大学の先輩であり、当時農商務省にいた鈴木馬左也に誘われ、1899年に内務省を退官し、住友に入社することになります。この決断は、小倉の人生を大きく変える転換点となりました。

住友では、伊庭貞剛や河上謹一といった人物に目をかけられ、頭角を現しました。1918年には住友本店理事長に就任し、1921年には住友本店を合資会社に改組して常務理事となりました。そして1930年には住友合資会社総理事に就任し、住友財閥の最高経営者となります。以後10年にわたり、住友の企業経営の合理化を徹底的に推し進めました。また、1937年には住友本社の株式会社化を実現し、グループ各社の株式会社化も断行しました。

政治家としての活動

1933年、小倉は貴族院議員に勅選され、政治の世界にも足を踏み入れます。そして、第2次近衛内閣では国務大臣（無任所）、第3次近衛内閣では大蔵大臣に就任しました。小倉は自由経済を信条としており、統制経済には反対の立場でしたが、戦時経済への移行を余儀なくされました。1942年には戦時金融金庫初代総裁に就任し、戦時体制下における金融政策にも関与しました。しかし、1946年には貴族院議員を辞任し、1951年に追放解除となるものの、第一線に復帰することはありませんでした。

戦後の活動と晩年

戦後の日本の道徳荒廃を嘆いた小倉は、石門心学会長、修養団後援会会長として、日本人の道徳復興を目指す活動に尽力しました。また、剣禅一致の精神修養にも励むなど、個人的な精神鍛錬にも努めました。大正5年に鈴木馬左也に随行して訪中して以来、中国の史蹟を訪ね、様々な人士と交流を深め、中国文化にも造詣が深かったことでも知られています。さらに、興亜院福建省厦門連絡部長官や厦門日本人慈善会にも携わり、日本および中国国内の財産を譲渡するなど、日中関係にも貢献しました。東京都三鷹市のアジア・アフリカ図書館（旧アジア文化図書館）建設委員会委員長として、国際文化交流にも貢献しました。

小倉正恒は、激動の時代を実業家として、また政治家として、さらに文化人として多岐にわたり活躍しました。その生涯は、日本の近代史を語る上で欠かせない重要な一部となっています。

著書

『日本国憲法』
『行政法』
『現代家族関係論』
『私の生活信条』
『小倉正恆談叢』
『蘇浙游記』

栄典

1941年（昭和16年）4月15日 - 従三位
1940年（昭和15年）11月10日 - 紀元二千六百年祝典記念章

親族

白石正邦 - 妹の夫。歴史学者。

参考文献

『貴族院要覧（丙）』昭和21年12月増訂、貴族院事務局、1947年。

関連項目

懐徳堂記念会
住友財閥
修養団
無窮会

外部リンク

* 住友グループ広報委員会

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