日本スポーツ仲裁機構

日本スポーツ仲裁機構（JSAA）とは

公益財団法人日本スポーツ仲裁機構（Japan Sports Arbitration Agency、JSAA）は、日本におけるスポーツに関する紛争の解決を専門とする機関です。単に紛争を解決するだけでなく、スポーツ法学の研究や一般への啓発活動も積極的に行い、スポーツ界全体の健全な発展に寄与しています。

設立の背景と目的

JSAAは、1999年12月に日本オリンピック委員会（JOC）内に設置された「スポーツ仲裁研究会」をルーツとしています。スポーツにおける紛争解決の必要性が高まる中、そのための専門機関設立を目指し、研究会が具体的な準備を進めました。2001年には、JSAA設立に関する提言がまとめられ、2003年4月にJOCによって正式に設置されました。

組織のトップである機構長（代表理事）は、沖野眞已東京大学大学院法学政治学研究科教授が務めています。理事には、元スポーツ選手やスポーツ団体関係者、弁護士などが名を連ね、スポーツ界と法曹界の知見を融合させた組織運営が行われています。

2009年4月には一般財団法人化、2013年4月には内閣総理大臣からの公益認定を受け、公益財団法人として、より公共性の高い活動を展開しています。

主な活動内容

JSAAの主な活動は、以下の通りです。

仲裁・調停: ドーピング問題やオリンピック代表選考に関する紛争など、スポーツに関する様々な紛争の解決を仲裁・調停によって支援します。
スポーツ法学の研究: スポーツに関する法的課題について研究を行い、その成果を公表することで、スポーツ法の発展に貢献します。
啓発活動: スポーツ関係者や一般市民に向けて、スポーツ仲裁の意義や手続きについて啓発活動を行います。

仲裁手続きの種類

JSAAには、対象とする紛争や当事者、手続き費用などが異なる4つの仲裁手続きが存在します。

1. スポーツ仲裁規則
2. ドーピング紛争に関するスポーツ仲裁規則
3. 特定仲裁合意に基づくスポーツ仲裁規則
4. 加盟団体スポーツ仲裁規則

これらの規則は、必要に応じて使い分けられ、より適切な紛争解決を目指しています。

仲裁手続は当事者の合意に基づいて行われるため、JSAAへの依頼には、当事者双方の合意（仲裁合意）が不可欠です。仲裁合意は、紛争発生後に個別に合意する場合と、競技団体の規則にあらかじめ定めておく場合（自動受諾条項または自動応諾条項）があります。

申立事例

JSAAは、これまで数々のスポーツ紛争に関わってきました。以下に代表的な申立事例を紹介します。

2004年 日本馬術連盟 アテネオリンピック代表選考
加藤麻理子選手が、代表選考の不当性を訴え申し立てを行うも棄却。訴訟の一部負担として日本馬術連盟に計55万円の支払いを勧告。
2008年 日本カヌー連盟 北京オリンピック代表選考
女子選手が代表選考の不当性を訴え申し立てを行うも棄却。
2011年 日本ボート協会 ロンドンオリンピック代表選考
武田大作選手が選考方法の不正を訴え仲裁を申請。JSAAは日本代表クルーの内定取り消しを認める。

調停手続き

JSAAでは、仲裁だけでなく、調停（和解あっせん）手続きも提供しています。調停では、公正中立な専門家が助言を行い、当事者間の和解を促します。

ただし、競技中に行われた審判の判定や、競技団体が下した懲罰処分については、事実確認の場合を除き、調停の対象外となります。

調停合意

調停手続も仲裁手続と同様に、当事者双方が調停による解決に合意していることが必要です。

申立事例

2014年
第92回全国高校サッカー選手権滋賀県大会での誤審疑惑に対し、県内の高校サッカー関係者2名が県高校体育連盟を相手に調停を申し立て。

まとめ

日本スポーツ仲裁機構（JSAA）は、スポーツにおける紛争解決の専門機関として、仲裁・調停手続きの提供、スポーツ法学の研究、啓発活動を通じて、スポーツの公正性、透明性を高めるために重要な役割を果たしています。

関連項目

裁判外紛争解決手続 (ADR)
* スポーツ仲裁裁判所

外部リンク

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