日本ルーテル・アワー

日本ルーテル・アワーは、日本におけるルター派教会の一つである日本福音ルーテル教会によって運営されていた、かつての放送伝道および文書伝道部門です。戦後、キリスト教の教えを広く伝えるためのメディア伝道組織として設立されました。

沿革

その起源は1950年に遡ります。アメリカのミズーリ・シノッド・ルーテル教会が中心となり、国際ルーテル信徒連盟の日本支部として、日本福音ルーテル教会を含む全日本ルーテル教会連合と協力して設立されました。翌1951年10月、日本初のキリスト教伝道番組として、中部日本放送でラジオ番組『ルーテル・アワー』の放送を開始しました。この番組は次第に全国の放送局にネットを広げ、多くのリスナーに届けられました。また、同年11月からは、家庭で聖書を学べる『聖書通信講座』もスタートし、こちらも大きな反響を呼びました。

放送伝道の分野では、ラジオだけでなくテレビへの展開も積極的に行いました。1957年12月24日には、日本テレビと共同でクリスマスイブ礼拝の生中継を実施し、これがルーテル・アワー初のテレビ番組となりました。1965年にはルーテル・テレビ委員会を設立し、本格的にテレビ伝道番組の制作・放映を開始しました。ドラマ、ドキュメンタリー、音楽番組など、多岐にわたるジャンルの番組を制作し、多くの放送局で放送されました。

しかし、1980年代に入ると、放送局での宗教番組の取り扱いが変化し、ルーテル・アワーの番組が打ち切られるケースが増加しました。これに伴い、番組制作は各ルーテル教会の自主制作へと移行していきました。そして、1989年12月をもって、日本ルーテル・アワーとしての放送伝道活動は終了しました。その後はインターネットを利用した宣教活動や、教会音楽のCD制作・販売など、活動規模を縮小して継続しましたが、最終的に2003年5月31日に解散しました。

現在も『ルーテルアワー・心に光を』という番組名でラジオ放送は続いていますが、これは日本ルーテル・アワー解散後に西日本福音ルーテル教会が制作を引き継いだものです。また、日本福音ルーテル教会東教区ではインターネットによる聖書通信講座も行われており、かつての活動の一部が形を変えて受け継がれています。

主な活動内容

放送伝道

日本ルーテル・アワーは、長年にわたり多種多様なラジオ・テレビ番組を制作・放送しました。黎明期のラジオ番組『ルーテル・アワー』では、平川唯一や石黒達也、大平透といった著名人がパーソナリティを務めました。後に『ルーテルアワー・この人を見よ』と改題された際にはラジオドラマ形式となり、関屋五十二が脚本・演出を手がけ、高城淳一、風祭修一、武藤礼子といった俳優・声優が出演しました。このラジオドラマの中にはテレビドラマ化されたものもあります。

その他、クラシック音楽番組『ルーテルアワー・夜の名曲』、ミニ番組『イメージ・カプセル』『カプセル・メイト』（青木淳/原田正治がパーソナリティ）、『ルーテルアワー・こころの歌』『こころの詩』（ラジオドラマ形式）、『ラジオ福音手帖』など、多くの番組が制作されました。

テレビ番組としては、初のカラー作品となったドラマ『愛と憎しみの間』や、ドキュメンタリー番組『クリスマスは生きている』『ある異人の100年』『世界のおかあさん』、さらに三浦綾子の小説を原作とするドラマ『氷点』（1966年版）など、質の高い番組を提供しました。これらの制作には、東映テレビ・プロダクションや近代映画協会などが協力し、千葉茂樹、新藤兼人、吉村公三郎、神山征二郎、乙羽信子といった著名なスタッフや出演者が関わりました。

また、ルーテル・アワーはキリスト教伝道番組において聴取者プレゼントを早期に導入したことでも知られています。賛美歌のソノシート、聖句入りのレターセット、カレンダー、ポケットサイズの新約聖書などがプレゼントされ、これがきっかけでキリスト教に興味を持つ人も少なくありませんでした。

聖書通信講座

1951年に開始された聖書通信講座は、日本ルーテル・アワーのもう一つの柱となる活動でした。ルーテル神学大学教授であった岸千年がテキストの執筆と監修を担当しました。開講からわずか1ヶ月で多数の受講希望者が集まり、1963年には受講者数が100万人を突破するなど、驚異的な成功を収めました。この講座は、ルーテル教会を含む日本のキリスト教諸教会における信徒増加に大きく貢献したと言われています。ラジオ番組『ルーテル・アワー』を聴いて講座を受講し、教会に通うようになり、最終的に洗礼を受けるという道筋は、当時の典型的な入信パターンの一つでした。後に関屋五十二がテキスト改訂に参加し、「すぐに」という表現が何回出てくるかを問うなど、人間の本質に迫る設問が加えられ、さらに好評を博しました。しかし、時代の変化とともに受講希望者は減少し、ルーテル・アワーによる通信講座は終了しました。

日本ルーテル・アワーは、約半世紀にわたりメディアを通じてキリスト教の福音を伝え続け、その活動は日本の教会史において重要な足跡を残しました。解散した現在も、その精神は後継組織によって引き継がれています。

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