日本ロマンス旅行

『日本ロマンス旅行』

『日本ロマンス旅行』（にっぽんロマンスりょこう）は、1959年に公開された日本のオムニバス劇映画であり、新東宝が手掛けました。この作品は、近江俊郎や石井輝男、中川信夫など、10人の監督による多様なエピソードが特徴的です。

概要

この映画は、大蔵貢社長の原作をもとに、岡戸利秋が脚色しました。総監督として近江俊郎が関与し、全10篇からなる物語を一つの作品としてまとめています。各エピソードには日本の歴史に存在した人物や架空のキャラクターが登場し、ユーモアとロマンスが織り交ぜられた内容が展開されます。

1959年6月19日、公開日には多くの人々を惹きつけ、映画は思いのほかのヒットを記録しました。物語の舞台は、定山渓、札幌、会津若松、下田、修善寺、京都、大阪、宮島、長崎、高知の10カ所にわたります。各地の特色や歴史的背景が色濃く反映され、見る者に深い印象を与えることでしょう。

エピソードの構成

本作は、オムニバス形式でそれぞれのエピソードが独立しながらも、全体を通して一つのテーマ、「ロマンス」に基づいています。大楽所長（由利徹）と北田副所長（南利明）が俳優志望生徒に向け、選りすぐりの物語を紹介するという形式で進行します。それぞれのエピソードでは、特定の歴史的な出来事や人物のロマンティックな側面が描かれています。

主なエピソード

• - 定山渓: 僧・美泉定山がアイヌの人々との関係を描き、恋や友情の物語が展開されます。
• - 札幌: クラーク博士が札幌農学校を改革し、「少年よ大志を抱け」という名セリフが語られます。
• - 会津若松: 白虎隊の悲劇を背景に、愛する人との別れとその切ないドラマがメインの内容です。
• - 下田: 黒船来航を背景に、許婚を巡る恋の葛藤が描かれます。
• - 修善寺、京都、大阪、宮島、長崎、高知のエピソードもそれぞれ独自のドラマを展開し、見る人に歴史的な感動を与えます。

制作背景

新東宝の社長である大蔵貢は、「企画第一主義」を掲げ、安く早く制作する方針を持っていました。その影響で、一話を二日で撮影するという短期間の制作スケジュールが設定され、効率的な撮影が行われました。特に、大蔵社長は密に現場に関与し、監督たちとともに作品のクオリティを高めるために尽力しました。このような特異な制作体制は、映画業界の歴史における興味深い側面です。

映画の影響

時代の流れの中で、この映画は観客に多くの笑いと感動を提供しました。また、映画の公開から数年後、新東宝の後身にあたる国際放映が著作権を継承しなかったため、現在に至るまで権利の所在が不明となっています。それでもなお、『日本ロマンス旅行』は、日本映画の中でも特異な存在感を持つ作品として語り継がれています。

このように、『日本ロマンス旅行』は、作品を通じて日本の多様な歴史やロマンスが描かれた魅力的な映画であり、一見の価値があります。

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