日本共産党の研究

『日本共産党の研究』の概要

書籍の背景と内容

『日本共産党の研究』は、著述家の立花隆が日本共産党の歴史、とりわけ戦前の動向を考察した書籍です。この作品は、コミンテルンによる指導、資金の流れ、党の組織構造、特高警察との対立、さらには多くの転向者たちのケースを通じて、戦前の日本共産党がどのように成立し、またその危機的状況に至ったのかを実証的に探求しています。

特筆すべきは、この研究が理論や理念に基づくものではなく、具体的な人々や事件を通じて描かれている点です。立花は克明な取材を行い、当時の関係者の証言を多数収集しており、そこから新たに明らかにされた事実も多くあります。特に、日本共産党史上最大のスパイ「スパイM」、即ち飯塚盈延に関する論争を根本から洗い直したことも評価されています。

執筆の経緯

この書籍は、1975年12月に発売された『文藝春秋』での連載から始まりました。この連載では、1933年に発生したスパイ査問死亡事件が取り上げられるなど、党の暗黒面を浮き彫りにしました。1977年まで続いた連載は読者に大きな衝撃を与え、多くの資料収集や取材を経て1978年に上下巻として単行本化されました。

立花はその後、講談社ノンフィクション賞を受賞し、さらには文庫本としても再刊されるなど、多くの反響を呼びました。

反響と批判

日本共産党はこの書籍に対し激しい反発を示しました。彼らは特高警察や検察当局の資料に基づく立花の論調を「特高史観」と批判し、その根拠の誤りを指摘するパンフレットを発行するなど、反論を展開しました。また、党機関紙『赤旗』にも立花の批判に関する論文が多数掲載され、連載と同じ月には宮本顕治の公開討論も行われました。

当時の党内では、立花の主張に対抗するために多くの資料が公表され、党の歴史に対する解釈が激しく対立しました。特に袴田里見の回顧録が予期せぬ波紋を広げ、除名処分に至ったことは、党内政治に大きな影響を及ぼしました。

書籍の評価と影響

『日本共産党の研究』は、単に歴史的な分析にとどまらず、戦後日本における共産党の理解にも影響を与え続けています。立花の取材を基にした事象の多くは、その後の歴史研究や社会運動にも影響を及ぼし、今日に至るまで資料としての価値を持ち続けています。

結論

この書籍は、日本共産党にとっての研究対象のみならず、広く日本の歴史を見つめ直すための重要な資料といえます。立花隆の冷徹な視点と克明な取材は、紛れもなく日本の近現代史を知る上で欠かせない作品となっています。

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