日本放送協会の放送形態

日本放送協会（NHK）は、多様な放送サービスを提供しており、その形態は放送波の種類、地域、時代によって様々な違いが見られます。本項目では、NHKの放送がどのように構成され、運用されているのか、体系、技術、そして運用上の差異に焦点を当てて解説します。

放送系統と放送波

NHKの放送は、地上波、衛星放送、国際放送に大別されます。地上波には総合テレビ、Eテレ（教育テレビ）、ラジオ第1、ラジオ第2、FM放送があります。衛星放送はBSとして提供され、国際放送はNHKワールドとして世界に向けて発信されています。

近年、世界の主要放送機関が情報発信の主軸をラジオからテレビやインターネットに移していることに伴い、NHKでもテレビの国際放送を強化する動きが見られます。

地上デジタルテレビ放送の開始当初は、デジタル特有の機能を生かした別編成が存在した時期もありましたが、デジタル化の本来の目的がアナログ停波であったため、現在はデジタルEテレの一部のマルチ編成や、ごく一部の地域放送を除き、アナログとデジタルの編成上の区別はほとんどなくなっています。

広域放送の形態は、放送波によって異なります。例えば、関東広域圏の総合テレビやラジオ第1では、親局である東京放送局を中心に、複数の放送局が同一の放送系統に属しています。一方、北海道や福岡県などでは、道県域放送として親局管轄下に複数の放送局が存在しつつも、一部独自番組を放送しています。ラジオ第2放送やEテレは基本的に全国同一の放送系統に属しますが、一部エリアでの独自編成も行われています。

番組編成

番組編成は、原則としてレギュラー編成が基本ですが、連続ドラマや生放送番組を除き、新作と過去の好評番組（アンコール放送）が組み合わされることがあります。

年間を通して、学期制や特定の大型連休、年末年始などには定時番組を休止し、特別番組が編成される傾向があります。かつてEテレやラジオ第2では学期間の集中再放送が多く行われていましたが、NHK for Schoolのインターネット配信普及により、近年は地上波での再放送は減り、一般特番が増加しています。ただし、ラジオ第2の一部の語学番組では、引き続き学期末に週間復習の再放送が実施されています。

放送休止

Eテレとラジオ第2放送以外の放送波は、原則として24時間放送を実施しています。放送休止は、主に放送機器のメンテナンスのために各放送局が任意で行う程度です。地上波放送で一部地域が休止する場合、基幹局自体は休止しないことが多いですが、ラジオ第1放送では伝送方法の違いにより、基幹局が休止しつつ他の中継局が終夜放送を行う場合もあります。

アナログ放送とデジタル放送が並行していた時期は、同時に休止する場合と、片方のみ休止する場合がありました。休止の範囲は、放送エリア全体の場合と特定地域に限定される場合があります。BS放送では、デジタル放送は年に一度程度の休止です。

放送休止前後には、局の識別情報を示すジャンクション映像やアナウンスが入ります。テレビでは、休止前や再開時に国旗（日章旗）の映像とともに国歌「君が代」が放送されるのが通例です。これは1951年のラジオ放送開始、1953年のテレビ放送開始以来続くもので、テレビでは国旗の掲揚映像が伴います。24時間放送が定着してからは、君が代の定時放送はEテレとラジオ第2のみとなり、他の波ではメンテナンス休止前後に限られます。

ラジオ第2放送では、放送開始前後にチェレスタによるオリジナルのインターバル・シグナル（IS）が放送されます。これは熊田為宏氏作曲の「ラジオの開始・終了音楽」で、長年メロディーは変わっていません。かつてはラジオ第1やFMでもISが流れていましたが、24時間放送化や各局任意休止への移行に伴い廃止されました。

局名告知とコールサイン

放送局を識別するために、電波法に基づき局名やコールサイン（呼出符号）がアナウンスされたり、画面に表示されたりします。

コールサインは地上基幹放送局に指定され、現在は4つのパターンが主に使用されていますが、歴史的経緯による例外も存在します。例えば、過去に朝鮮放送協会が使用していた符号や、他局と混同しやすいなどの理由で使用されなかった符号があります。また、過去にラジオ第2やアナログテレビで使用されていたコールサインが、デジタル化や設備統合により廃止されたケースも多数存在します。

地上テレビ放送では、原則として1日の基点時間と放送休止前にコールサインがアナウンスされます。ラジオ放送では、より頻繁に（特定の時間帯や番組終了後に）アナウンスが行われます。ただし、地域限定の休止の場合など、一部例外的にアナウンスがない場合もあります。北海道地方のEテレやラジオ第2では、かつて各局別に行われていたコールサインアナウンスが省略され、札幌放送局からの統一アナウンスのみとなっているなどの地域差も見られます。

テレビの局名表示（ID表示）は、静止画テロップで行われます。アナログ放送時代には、各局が地元の名所などを背景にした独自デザインを使用していましたが、地上デジタル放送開始後は全国共通のデザインが導入されました。現在のID表示は、NHKのロゴをベースにした統一デザインで、コールサイン、NHKロゴ、放送局名が3行で表示され、系統別のカラーが用いられています。デジタル放送以降はチャンネル番号の表示はなくなりました。

地域ごとの特殊事情

地理的な条件により、特別な放送運用が行われる地域があります。例えば、小笠原諸島や大東諸島のような本土から離れた離島では、かつて通信衛星を利用して東京の放送を送信・変換していましたが、地上デジタル放送では海底光ファイバーケーブルで伝送される形態に移行しました。これらの地域では、長らくラジオの中継局が存在しない状態が続いていましたが、近年FM波での中継局が設置され、またインターネット配信サービス「らじる★らじる」や「NHKプラス」により、ラジオ・テレビともに視聴・聴取環境が改善されています。

かつてのアナログ放送時代には、全国ネットとローカル番組の切り替え時に画面が乱れる現象やタイムラグが発生することがありましたが、機器の改良によりデジタル放送開始までに解消されました。

NHKの放送形態は、技術の進歩や社会情勢の変化、そして地域の特性に合わせて常に進化しており、その複雑なシステムによって多様なサービスが提供されています。

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