日本救急システム

日本救急システム株式会社について

日本救急システム株式会社は、宮崎県東臼杵郡美郷町に本社を置く企業です。主な事業内容は、消防本部を持たない自治体における救急救命業務の民間委託と、救急救命士の育成を目的とした教材開発です。

常備消防未設置町村の救急業務

日本では、人口や財政上の問題、地理的な条件などから、消防本部を設置していない自治体が存在します。これらの自治体では、消防団が消防業務を担う一方で、救急業務は役場職員や診療所職員が対応する「役場救急」「診療所救急」が中心となっています。

役場救急では、救急救命士の資格がなくても業務に従事できる場合が多いですが、一部の高度な救命処置は行えません。そのため、緊急搬送が主な業務となっています。しかし、医師や看護師、救急救命士が同乗すれば、通常の救急業務と同様の医療行為が可能です。

救急救命業務の民間委託化

日本救急システムは、2015年6月に宮崎県美郷町で初の救急救命業務の民間委託を開始しました。町の所有する救急車に救急救命士が乗り込み、医療行為を行いながら緊急搬送を行うという、それまでにはなかったシステムを構築しました。その後、徳島県勝浦町（2017年4月）、沖縄県竹富町（2020年7月）でも同様の事業を展開しています。

これらの救急搬送は、消防機関と同様に、利用者への料金請求は行われません。また、消防機関と連携し、救命救助訓練を実施したり、救命救助体制の構築にも力を入れています。

事業の沿革

• - 2013年8月：「救急教育出版」として創業
• - 2014年8月：国士舘大学関係者が美郷町を視察
• - 2014年10月：「日本救急システム」に社名変更
• - 2015年6月：美郷町で救急救命業務委託を開始
• - 2017年4月：勝浦町で救急救命業務委託を開始、徳島支社を設置
• - 2020年7月：竹富町（西表島）で救急救命業務委託を開始、沖縄支社を設置

事業内容

• - 救急救命業務事業：美郷町、勝浦町、竹富町での救急救命業務委託
• - 病院間転院搬送業務：美郷町内での病院間の転院搬送
• - 救急救命士国家試験対策模試事業：救急救命士の育成支援
• - 大学機関への救急救命士派遣：大学病院や大学への救急救命士派遣
• - 応急手当講習会、イベント救護：地域住民への救命知識普及活動

救命救急業務の民間委託に至るまで

創業者の白川透氏は、国士舘大学大学院で救急システム研究科の助手として勤務していました。ある日、宮崎県出身の学生から「実家のある村には救急車がない」という相談を受け、衝撃を受けたそうです。この出来事が、消防本部がない自治体での救急救命業務の必要性を強く認識するきっかけとなりました。

その後、美郷町を視察したところ、役場救急では十分な救命処置ができていない現状を知りました。そして、消防と救急を分離し、救急を専門とする民間委託事業を構想しました。これにより、救急救命士の新たな活躍の場を創出できると考えたのです。

各自治体での取り組み

• - 美郷町：救急救命士が町内に移住し、役場や支所を詰所として活用。町の救急車で緊急搬送やドクターヘリ搬送依頼を行います。また、独自のメディカルコントロール体制を構築し、救急活動の質を向上させています。さらに、病院間転院搬送業務も行っています。
• - 勝浦町：救急救命士に加え、救急搬送を行う臨時職員が対応。徳島県MC協議会と連携し、ドクターヘリやドクターカーの要請も行っています。救急救助訓練にも積極的に参加し、救急救命体制を強化しています。
• - 竹富町（西表島）：当初は平日の昼間のみの対応でしたが、現在は24時間365日体制で救急救命業務を行っています。

民間委託の根拠法

厚生労働省は、民間企業所属の救急救命士による救急救命処置について、救急救命士法に基づき活動できるとしています。救急救命士は、所属機関や搬送能力による制限を受けず、患者発生地点から医療機関に到着するまで、救急救命処置・特定行為を実施できます。

まとめ

日本救急システムは、消防機関のない地域における救急医療の課題解決に貢献しています。民間委託による救急救命業務は、地域の安心・安全を支える新たなモデルとして注目されています。今後も、救急救命士の育成、救急体制の強化に尽力し、地域社会への貢献を目指しています。

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