日本旋法を基調とした交響曲

日本旋法を基調とした交響曲

市川都志春作曲の「日本旋法を基調とした交響曲」は、日本の伝統的な音階や旋法をベースに、西洋音楽のオーケストラ技法を融合させた意欲的な作品です。1977年にズデニェク・コシュラー指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団によって初録音されましたが、その後、作曲者自身による大幅な改訂が加えられ、1985年に外山雄三指揮NHK交響楽団によって最終稿が録音されました。演奏時間は約38分。

編成

この交響曲は、3管編成のオーケストラのために書かれており、その編成は以下の通りです。

ピッコロ 3
フルート 3
オーボエ 2
コールアングレ 1
クラリネット 2
アルト・サキソフォン（またはバス・クラリネット） 1
テナー・サキソフォン 1
ファゴット 2
コントラファゴット 1
ホルン 4
トランペット 3
トロンボーン 3
テューバ 1
ハープ 2
チェレスタ 1
ティンパニ 1
スネアドラム 1
トムトム 1
バスドラム 1
タンバリン 1
トライアングル 1
シンバル 1
タムタム 1
グロッケンシュピール 1
マリンバ 1
ヴィブラフォン 1
ベル 1
弦楽五部

構成

全2楽章構成で、第1楽章「陰の章」、第2楽章「陽の章」と名付けられています。

第1楽章「陰の章」

演奏時間約14分。この楽章では、作曲者の戦争体験と、その根底にある「陰の美学」が音楽的に表現されています。

冒頭は、戦雲が迫るような荒々しいオーケストラ全体の導入で始まります。この導入部のモチーフは、後にトロンボーンによって奏でられる「悲愴美の主題」の断片的な先行提示です。トロンボーンからホルンへ、そしてトランペットのリズム動機が加わり、この主題は勢いを増していきます。その後、一時的に勢いを緩め、再び上昇して弦楽器によって「陰を克服する意志の副主題」が力強く奏でられます。この副主題はホルンに受け継がれ、強い語調で繰り返されます。ファゴットを中心に「哀感の第2主題」が歌われ、弦楽器から始まるフーガ的な展開は、この副主題を変容させたものです。ホルンとトランペットが「悲愴美の主題」の変形を挟み込み、再び第2主題に基づく旋律が展開していきます。オーケストラ全体の演奏の後、やや趣を変えたエピソードが現れます。その後、「意志の副主題」がポリフォニックな展開を見せ、ヴァイオリンから始まる「苦悩の第1主題」に到達します。副主題のモチーフによる展開がオーケストラ全体に広がり、ほぼユニゾンで確認された後、提示部が終わります。反復部は力強い開始となり、甘美なオスティナートへと変化します。次第に華やかな響きへと転じ、副主題の動機と第2主題が組み合わされた楽想が展開され、テンポを速めて変奏へと進みます。最後はファンファーレと各モチーフが絡み合うコーダに突入し、嬰ハ、ト、変イの三つの音で決然と終結します。

第2楽章「陽の章」

演奏時間約24分。この楽章は、日本古来の様々な「うた」をモデルに、西洋型の音楽思考を否定した作曲者の持論に基づいた創作体系が、交響管弦楽で表現されています。

「馬子唄ふうな主題」、「わらべ唄ふうな主題」、「船頭唄ふうな展開」、「念仏歌ふうな展開」、「フィナーレ」の5つの部分で構成されています。この楽章全体を特徴づけるものとして、「5」という数字が支配的です。5音音階の和声、5つの音の複合リズム、5拍子を中心とした変拍子など、さまざまな形で「5」という数字が用いられています。

参考文献

「日本旋法を基調とした交響曲」（教育芸術社、1977年）
「日本旋法を基調とした交響曲」（ズデニェク・コシュラー指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団演奏、デンオンOF-7123-FD、レコード）
* 「市川都志春作品集1」（外山雄三指揮NHK交響楽団演奏、デンオンOF-7192-ND、レコード）

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