日本水準原点

日本水準原点：日本の高さの基準点

日本水準原点（にほんすいじゅんげんてん）は、日本における水準測量の基準となる点です。この原点は、東京都千代田区の国会議事堂近くに位置する日本水準原点標庫という建物の中にあります。周囲には附属標石があり、これらを含めて国の重要文化財に指定されています。

所在と歴史

日本水準原点は、東京都千代田区永田町一丁目、国会前庭洋式庭園内に位置しています。具体的な場所は、北緯35度40分37.9899秒、東経139度44分52.2492秒です。

この原点の設置は1890年に計画され、翌年の1891年に当時の参謀本部陸地測量部があった場所に竣工しました。選定地は、古くからの台地上にあり、地盤沈下の影響を受けにくい場所でした。また、標庫の基礎は地下10メートル以上の安定した地層に築かれており、原点の高さが変動するリスクを最小限に抑える工夫がされています。

しかし、原点の高さは不変ではありません。設置当初の標高は東京湾平均海面（T.P.）+24.5000メートルでしたが、1923年の関東大震災による地殻変動でT.P.+24.4140メートルに改定されました。さらに、2011年の東日本大震災による沈下で、現在の標高はT.P.+24.3900メートルとなっています。

このように、日本水準原点の標高は、地震などの自然現象の影響を受けて変動しており、定期的な再測量によって常に正確な値が保たれています。

水準原点の構造と付属点

日本水準原点標庫は、原点を保護するための石造りの建物です。建物自体が水準原点であると誤解されがちですが、原点は建物内部の黒い蓋の下にあります。建物は、設計者佐立七次郎の初期の作品であり、ローマ風神殿建築に倣ったドーリア式オーダーを持つ、明治期の貴重な洋風建築です。

また、原点の周囲には、万が一原点が失われた際に復元するための付属点が5箇所あります。これらは、甲号、乙号、丙号、丁号、戊号と名付けられ、丁号のみ地上にありますが、他は地中に蓋で覆われた状態で設置されています。

東京湾平均海面（T.P.）

全国の標高の基準となる東京湾平均海面（Tokyo Peil：T.P.）は、「東京湾中等潮位」とも呼ばれ、日本水準原点の標高を定める上での基準となっています。この数値は、1873年から1879年までの東京湾の満潮と干潮の潮位を測定し、平均値を算出して求められました。この時の水位をゼロメートルとして、全国の標高が定められています。

測量法では「平均海面」という用語が使われますが、水路業務法では「平均水面」という用語が用いられています。これは、水路業務法が海面だけでなく、湖や河川の水面にも適用されるためです。

離島における高さの基準

本土から遠く離れた離島では、日本水準原点からの高さを測ることが困難なため、その島における平均海面が測量の基準とされています。例えば、沖縄本島では中城湾の平均海面が基準となっています。日本全国の離島には、それぞれの基準となる平均海面が定められており、2003年の時点で37の離島で原点数値が定められています。

文化財としての価値

日本水準原点と日本水準原点標庫は、2019年に国の重要文化財に指定されました。この指定名称は「水準原点」であり、「日本」は冠称されていません。標庫だけでなく、原点自体と付属標石も指定対象となっています。また、土木学会選奨土木遺産にも選ばれており、その歴史的、文化的価値が広く認められています。

記念切手

1991年には、日本水準原点の設置100周年を記念して記念切手が発行されました。この切手には、日本水準原点標庫と、明治時代に使用されたドイツ製の水準儀が描かれています。

まとめ

日本水準原点は、日本の標高を測る上で欠かせない基準点です。その歴史、構造、そして文化財としての価値は、日本の測量技術と歴史を物語っています。日本水準原点は、私たちの生活に密接に関わっているとともに、技術と歴史の重要性を示す存在であると言えるでしょう。

水準原点は、地震などの影響によってその標高が変動することから、常に正確な数値を保つための定期的な観測が不可欠です。この観測によって得られるデータは、日本における様々な公共事業や防災対策に活用されています。

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