日本法制史

日本法制史の解説

日本法制史とは、歴史的な資料をもとにして、日本の法制度や法的現象を研究する学問分野です。研究の対象は、基本的には特定の時期に制限されていませんが、通常、1868年から1945年までの帝国時代に特に注目されており、この時期にヨーロッパの法制度が大きく導入されたため、プレ帝国時代の法制度との明確な断絶が生まれました。このため、法制史の研究の多くは、プレ帝国時代、すなわち徳川時代（1603年から1868年）を中心に行われています。一般的には、法制度の研究においては、プレ帝国時代は「日本近世法制史」、帝国時代は「日本近代法制史」、国民主権時代（1946年から現在）は「日本現代法制史」というように時代区分がされています。

プレ帝国時代には、有職故実の一環として律令についての研究が行われていましたが、日本法制史という分野を最初に体系的に研究したのは、東京帝国大学の宮崎道三郎です。彼はヨーロッパの法制史の研究方法を取り入れ、日本法制史の基盤を築きました。彼の研究の主な対象は平安時代まででしたが、その後の徳川時代全般の研究を系統的にまとめたのが弟子の中田薫です。また、国民主権時代においては、石井良助がこの分野を推進しました。

日本の法制史における重要な特徴は、政権所在地ではなく、政権や法の性質によって時代を区分する点です。ここでは、日本の法制を古代法、中世法、近世法に分けて考えます。

古代法の時代

古代法とは、その主な内容として、日本において7世紀末から8世紀初めにかけて中国の隋・唐の律令を模範にして編纂された法を指します。この時期は「継受法の時代」と呼ばれ、それ以前の時代は「固有法の時代」とされます。古代日本における法の発展は、律令法を境に大きく二つの時期に分けられますが、実際には中国大陸との接触を通じて固有法の中にも中国起源の要素が含まれていると考えられています。

法や慣習は古代のみならず、前近代社会においても一体のものであり、古代日本も同様でした。魏志倭人伝によれば、3世紀の邪馬台国ではすでに刑法や身分制に相当する法や慣習が存在していたとされています。古代の法や慣習の形成は、集落や共同団体の内部的な秩序に基づいていましたが、やがて政治的な権力の発展に伴い外部に向けての調停機能を持つようになります。

中世法

中世においては、法は慣習法が支配的でした。この時代には、本所法、武家法、公家法の三つの法体系が存在しました。平安時代後期には律令制が崩壊し、荘園が形成され、本所法はこれら荘園の領主に根ざした新たな権力体系を反映したものでした。一方で、武士階級が成立し、武士たちの道理に基づく武家法が確立されていきました。鎌倉幕府の成立によって、武家法は一部が成文化され、後の法律制度にも多くの影響を与えました。

近世法

徳川幕府の時代には、慣習法主体の法制が続きましたが、律令のような大規模な法典は制定されませんでした。武士社会では法律の支配という概念は薄く、各藩には独自の法令制定権がありました。徳川吉宗のもとでは、以前の慣習法が集約され公事方御定書が編纂されるなど、法制が洗練されていきます。しかし、法の改廃は家元同士の争いを引き起こすことが多く、「非理法権天」といった法観念が支配的でした。

日本法制史は、古代から現代にかけての法制度の変遷を理解し、法と社会との関係を探求する重要な学問です。

もう一度検索