日本無政府共産党

日本無政府共産党：戦前のアナキズムと高田農商銀行襲撃事件

1934年、日本に「日本無政府共産党」が誕生しました。名称は日本共産党に似ていますが、思想、構成員ともに全く別の組織です。本党は、前年に結成された日本無政府共産主義者連盟を母体としており、相澤尚夫らによる地下活動が特徴でした。相澤は『理想社会としての無政府』などといったパンフレットを発行し、警視庁から出版法違反容疑で追われる身となりました。

高田農商銀行襲撃事件と組織の崩壊

日本無政府共産党の活動は、1935年の高田農商銀行襲撃事件（別名：日本無政府共産党ギャング事件）によって大きく転換します。これは、活動資金獲得を目的とした強盗事件でしたが、失敗に終わりました。この事件の中心人物には、相澤尚夫、二見敏雄、寺尾実らがおり、彼らは襲撃失敗後、上海への逃亡を図るも、相澤は兵庫県で逮捕されます。二見は逃亡に成功しますが、その後逮捕されています。

この事件の発覚は、日本無政府共産党への大規模な摘発につながります。警察は、党関係者だけでなく、無政府主義者を含む多数を治安維持法違反容疑で逮捕しました。事件の捜査過程では、株券や通貨偽造の未遂、党員に対するリンチ殺人事件なども発覚。日本無政府共産党は、組織そのものが治安維持法違反として取り締まられ、植村諦中央委員長をはじめ多数の関係者が有罪判決を受けました。天皇制への直接的な言及はなかったものの、裁判所は治安維持法違反を認定したのです。17名が有罪判決を受け、戦前のアナキズム運動は終焉へと向かいました。

事件の全貌とその後

高田農商銀行襲撃事件は、計画段階から失敗、逮捕、さらなる関連事件の発覚と、一連の連鎖反応を引き起こしました。相澤らの逮捕後、警察は各地で一斉検挙を実施。二見は東京で逮捕された際、現金、拳銃、実弾を所持していました。さらに、千葉県で大量のダイナマイトと雷管が発見され、これは過去の労働争議で使用を企てたものと判明しました。これらの発見は、日本無政府共産党の活動の危険性と組織の徹底的な非合法性を浮き彫りにしました。

日本無政府共産党事件は、単なる強盗事件ではなく、戦前の日本の政治状況、治安維持法の運用、そして無政府共産主義運動の終焉を象徴する出来事でした。この事件は、当時の社会状況や治安維持法の厳しさ、そして無政府共産主義運動の現実を改めて考えさせる、重要な歴史的事件として位置づけられています。関係者たちは、それぞれ重い罪状で裁かれ、日本無政府共産党は壊滅状態となりました。この事件は、戦前のアナキズム運動研究において重要な位置を占めており、多くの研究者によって分析が続けられています。

関連事項

黒色テロ: 同時代の過激な政治運動との関連性
小野十三郎: 事件に関与した人物
* 農村青年社事件: 同時期に発生した別の政治事件との関連性

これらの関連事項を理解することで、日本無政府共産党事件の背景や影響をより深く理解することができます。

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