日本無線電信

日本無線電信株式会社

日本無線電信株式会社は、1925年に日本無線電信株式会社法に基づき設立された特殊会社です。当時の国際電信回線は、主に大北電信会社などの外国企業に依存しており、海外電報料金における支払い額が大きな負担となっていました。このような状況を打開するため、日本は自前の国際電信回線の確立を目指しました。

設立の背景

明治、大正時代において、日本の国際電信回線は、海底ケーブルを通じて大北電信会社に大きく依存していました。1903年には、商業太平洋海底電線会社がサンフランシスコからマニラまでの海底ケーブルを敷設し、グアムから小笠原へ分岐、日本政府が小笠原から東京までのケーブルを敷設することで、1906年に日米間の電信回線が開通しました。しかし、海外電信事業は依然として外国企業の設備に依存しており、その料金負担は無視できないものでした。

1919年、渋沢栄一の提唱により日米間の海底ケーブル敷設計画が検討されましたが、米国が外国法人によるケーブル陸揚げを許可しなかったため、実現には至りませんでした。

その一方で、無線技術が急速に発展し、通信に適した波長の確保が急務となっていました。大電力無線局の建設が求められましたが、日露戦争後の財政難から民間資金を活用する方針が決定され、1925年に日本無線電信株式会社が設立されました。

会社の業務と構造

資本金は2000万円で、政府は磐城無線局と無線局設置用地を現物出資しました。日本無線電信株式会社は、外国無線電報用の無線電信設備と付属設備の建設・維持を行い、それらを政府に提供することを主な業務としました。これは、1900年に公布された電信法第1条の「電信及ビ電話ハ政府之ヲ管掌ス」という規定に基づき、電報の受付、送受信、配達などの通信業務は政府が行うものとされていたからです。

しかし、海外通信については、政府が通信内容の伝送とそれを実現する業務を掌握していれば、設備は民間のものを利用しても電信法に抵触しないという解釈がなされました。このため、日本無線電信株式会社は設備提供会社として位置づけられ、通信量に応じた設備使用料を政府から受け取っていました。

その後の展開

日本無線電信株式会社は、設立後も技術革新に対応し、1930年には短波専用の小山送信所を開設しました。しかし、1938年には国際電話株式会社と合併し、国際電気通信株式会社に業務を承継し、その歴史を終えました。

関連事項

国際電話株式会社
国際電気通信株式会社
海底ケーブル
無線通信
* 内田嘉吉（初代社長）


日本無線電信株式会社は、日本の国際通信の自立を目指し、無線技術の発展に大きく貢献しました。その設立は、官民連携によるインフラ整備の好例として、今日の通信事業にも影響を与えています。

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