日本航空上海空港オーバーラン事故

日本航空上海空港オーバーラン事故

1982年9月17日に起こった日本航空792便のオーバーラン事故は、航空史における重大な出来事の一つです。この事故では上海虹橋国際空港を出発したダグラス DC-8-61が成田国際空港に向かっている最中、離陸直後に油圧系統の故障が発生し、滑走路をオーバーランしました。乗員および乗客124人のうち39人が負傷したこの事故は、航空機の安全性やメンテナンスの重要性を改めて認識させることとなりました。

事故機の詳細

事故機である日本航空792便のダグラス DC-8-61（登録番号 JA8048）は、1971年に製造され、同年に日本航空が購入しました。その後、1982年にはオリエンタル・リース社に売却され、再度日本航空へリースされていました。この機体は事故のわずか13日前に整備点検が行われており、優れた運航記録を持つベテラン機長と熟練の副操縦士、航空機関士が搭乗していました。

事故の経緯

日本航空792便は、当初上海から東京への国際定期旅客便として、CST14時に離陸し、CST16時55分の到着を予定していました。しかし、出発から約10分後、左旋回中にエアボトルの破裂による強い爆発音が発生しました。この破裂により油圧系統に関連する複数のパイプが破損し、ブレーキやフラップが使用不能となりました。機長は予備の油圧系統に切り替え、空港への引き返しを決定しましたが、その後もフラップの動作が不可能な状態が続きました。

792便は14時30分、通常の速度で滑走路に着陸を試みましたが、破損した油圧系統のため、ブレーキが効かず、150メートル以上も滑走路をオーバーランしてしまいました。機体は土手に衝突し、右主翼が爆脱し、一時的に機内で火災が発生しました。パニックが生じる中、乗員は避難を促し、最終的には7名が重傷を負う結果となりました。

調査と結果

事故後、中国民用航空局と運輸省の調査委員会が合同で事故調査を行いました。着陸直後は燃料漏れに伴う火災の危険があり、現場立ち入りが制限されましたが、事故の2日後から本格的な調査が開始されました。コックピットボイスレコーダーとフライトデータレコーダーのデータ分析により、問題の初期原因はエアボトルの破裂にあることが分かりました。このエアボトルは腐食や製造不良により亀裂が入った結果、爆発を引き起こしたとされ、重職にある機長のプレッシャーも考慮されましたが、彼の判断ミスは指摘されませんでした。

事故後の影響

この事故は、日本航空が続発していた事故やインシデントの中でも特に注目すべきものであり、政府は事故の翌日、日本航空にエアボトルの点検を命じました。その後、事故を受けた一連の対策が講じられ、航空の安全性に関する議論が活発に行われました。事故機は後に上海航空宇宙センターに移設され、公開展示されています。

これを受けて、日本航空792便は今もなお関西空港とハワイ・ホノルル間の路線で利用されていますが、東京と上海を結ぶ便としては今後使用されることはないとされています。日本航空における徹底した安全対策が今の航空とその信頼性を支えていることは言うまでもありません。

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