日本電気大型店協会
日本電気大型店協会（にっぽんでんきおおがたてんきょうかい）は、略称をNEBA (Nippon Electric Big-Stores Association) と称し、昭和から平成にかけて存在した日本の家電量販店による業界団体です。
この団体の前身は、1963年に発足した全日本電気大型経営研究会（全日電）です。全日電での研究活動を経て、1972年に「日本電気専門大型店協会」として、79社の加盟をもって正式な業界団体として設立されました。その後、加盟各社の取り扱い品目が家電に留まらず多様化したことを受け、1995年には「日本電気大型店協会」へと名称を変更しています。
NEBAが単なる経営研究会から業界団体へと発展した背景には、いくつかの複雑な要因が存在します。
設立当時の1960年代半ば、日本の電気メーカーは自社製品の販路を強固に統制するため、販売店の系列化を強力に推し進めていました。このような状況下で、自らの自主独立を維持しようとした家電大型店が集結したことが、団体設立の第一の理由です。大型店は、メーカーの系列に頼らず独自の仕入れルートを確立し、チェーンストア方式で経営を展開していました。彼らの多くは、もともと卸売業者や卸売と小売を兼営していた事業者からの転換組であり、仕入れに関する豊富な知識と経験を有していたため、規模の経済を活かして粗利を抑えつつ利益を上げる経営スタイルが可能でした。
彼らが卸売や卸小売から小売主体へとシフトしていった背景には、メーカーや既存小売店からの厳しい圧力がありました。戦前からの家電流通において中心的な役割を担っていた卸売業者は、家電市場の拡大とともに、メーカーが資本を投下して設立した販売会社（販社）にその機能を奪われていきました。また、卸売と小売を兼営する事業者、特に東京・神田秋葉原に集積していたような店舗は、既存の小売店から目の敵にされ、嫌がらせを受けることも少なくありませんでした。時には、集客に欠かせないネオン広告の設置さえ妨害されるといった厳しい現実に直面していました。
研究会に留まらず、より公的な団体としてメーカー、行政、そして消費者に対して自らの立場や主張を発信していく必要性を感じていたことも、団体設立の大きな要因でした。特に消費者への働きかけは重要視されており、団体発足の直接的な契機の一つとなったのが、当時のカラーテレビに対する不買運動であったことからも、その意図がうかがえます。
当初、業界の8割近くを系列店で固め、量販店の存在を必ずしも歓迎していなかったメーカー側も、次第に新勢力であるNEBAにメリットを見出すようになります。これにより、量販店がメーカーから公認される形となり、量販店向けの販社が設立されるなど、メーカー側の流通系列化は一応の完成を見ます。NEBA加盟店は、価格競争を仕掛けてきた総合スーパーに対し、豊富な品揃えで対抗しました。最盛期である1975年には93社が加盟し、2000年には加盟各社の合計売上高が2兆円を超える規模にまで成長しました。
しかし、NEBAは「共存共栄」を理念に掲げ、過激な安売り競争を避け、加盟各社の商圏への相互出店にも消極的でした。また、メーカーからの人材供給である「ヘルパー」による人件費圧縮や、古い慣習に基づくリベートなど、人脈に頼る部分が多く、構造的に脆弱な体質を抱えていました。財務体質を強化し、変化への迅速な対応が求められる1990年代に入ると、ヤマダ電機やコジマといった、NEBAに加盟していない、あるいは後に脱退した企業群が台頭してきます。これらの非NEBA加盟社は、後発であることからローコスト経営や効率的な小売システムを積極的に導入しており、バブル崩壊後の家電不況という外部環境の変化も彼らの改革を後押ししました。これにより、相対的にNEBA加盟店の地位は低下していきました。
ジャーナリストの坂本正一氏は著書『風雲家電流通史』の中で、NEBAの時代が終わった最大の要因として、既存店保護の役割を果たしていた大規模小売店舗法（大店法）が外圧により緩和・廃止されたことを挙げています。これにより、大規模店を含む新規出店が容易になり、競争環境が一変したことがNEBA加盟各社にとって大きな打撃となりました。時代の変化に対応できない体質、そして団体の役割に対する疑問から加盟社の脱退が相次ぎ、さらに近年の家電量販業界における再編の動きも加わり、2004年には加盟社数が30社にまで減少しました。NEBAは「一定の役割を終えた」として、2005年8月末をもって解散しました。
NEBA解散後、エディオンやヤマダ電機などの大手家電量販店約10社により、任意の団体である「大手家電流通懇談会」が設立され、その後2014年に「大手家電流通協会」と名称を変更し、業界団体としての活動を継続しています。
歴代会長には、全日電時代の永長佐京氏（第一家庭電器社長）、NEBA初代会長の谷口正治氏（ラオックス社長）らが名を連ねました。解散時点では、株式会社デンコードー、ギガスケーズデンキ株式会社、サトームセン株式会社、ラオックス株式会社、株式会社エイデン、上新電機株式会社、株式会社ベスト電器など、当時の有力な家電量販店が加盟していました。
関連語：家電量販店、電器店、系列電器店
この団体の前身は、1963年に発足した全日本電気大型経営研究会（全日電）です。全日電での研究活動を経て、1972年に「日本電気専門大型店協会」として、79社の加盟をもって正式な業界団体として設立されました。その後、加盟各社の取り扱い品目が家電に留まらず多様化したことを受け、1995年には「日本電気大型店協会」へと名称を変更しています。
NEBAが単なる経営研究会から業界団体へと発展した背景には、いくつかの複雑な要因が存在します。
設立の動機と独立志向
設立当時の1960年代半ば、日本の電気メーカーは自社製品の販路を強固に統制するため、販売店の系列化を強力に推し進めていました。このような状況下で、自らの自主独立を維持しようとした家電大型店が集結したことが、団体設立の第一の理由です。大型店は、メーカーの系列に頼らず独自の仕入れルートを確立し、チェーンストア方式で経営を展開していました。彼らの多くは、もともと卸売業者や卸売と小売を兼営していた事業者からの転換組であり、仕入れに関する豊富な知識と経験を有していたため、規模の経済を活かして粗利を抑えつつ利益を上げる経営スタイルが可能でした。
卸売から小売への転換期
彼らが卸売や卸小売から小売主体へとシフトしていった背景には、メーカーや既存小売店からの厳しい圧力がありました。戦前からの家電流通において中心的な役割を担っていた卸売業者は、家電市場の拡大とともに、メーカーが資本を投下して設立した販売会社（販社）にその機能を奪われていきました。また、卸売と小売を兼営する事業者、特に東京・神田秋葉原に集積していたような店舗は、既存の小売店から目の敵にされ、嫌がらせを受けることも少なくありませんでした。時には、集客に欠かせないネオン広告の設置さえ妨害されるといった厳しい現実に直面していました。
対外発信の必要性
研究会に留まらず、より公的な団体としてメーカー、行政、そして消費者に対して自らの立場や主張を発信していく必要性を感じていたことも、団体設立の大きな要因でした。特に消費者への働きかけは重要視されており、団体発足の直接的な契機の一つとなったのが、当時のカラーテレビに対する不買運動であったことからも、その意図がうかがえます。
メーカーとの関係と最盛期
当初、業界の8割近くを系列店で固め、量販店の存在を必ずしも歓迎していなかったメーカー側も、次第に新勢力であるNEBAにメリットを見出すようになります。これにより、量販店がメーカーから公認される形となり、量販店向けの販社が設立されるなど、メーカー側の流通系列化は一応の完成を見ます。NEBA加盟店は、価格競争を仕掛けてきた総合スーパーに対し、豊富な品揃えで対抗しました。最盛期である1975年には93社が加盟し、2000年には加盟各社の合計売上高が2兆円を超える規模にまで成長しました。
構造的な課題と衰退
しかし、NEBAは「共存共栄」を理念に掲げ、過激な安売り競争を避け、加盟各社の商圏への相互出店にも消極的でした。また、メーカーからの人材供給である「ヘルパー」による人件費圧縮や、古い慣習に基づくリベートなど、人脈に頼る部分が多く、構造的に脆弱な体質を抱えていました。財務体質を強化し、変化への迅速な対応が求められる1990年代に入ると、ヤマダ電機やコジマといった、NEBAに加盟していない、あるいは後に脱退した企業群が台頭してきます。これらの非NEBA加盟社は、後発であることからローコスト経営や効率的な小売システムを積極的に導入しており、バブル崩壊後の家電不況という外部環境の変化も彼らの改革を後押ししました。これにより、相対的にNEBA加盟店の地位は低下していきました。
終焉
ジャーナリストの坂本正一氏は著書『風雲家電流通史』の中で、NEBAの時代が終わった最大の要因として、既存店保護の役割を果たしていた大規模小売店舗法（大店法）が外圧により緩和・廃止されたことを挙げています。これにより、大規模店を含む新規出店が容易になり、競争環境が一変したことがNEBA加盟各社にとって大きな打撃となりました。時代の変化に対応できない体質、そして団体の役割に対する疑問から加盟社の脱退が相次ぎ、さらに近年の家電量販業界における再編の動きも加わり、2004年には加盟社数が30社にまで減少しました。NEBAは「一定の役割を終えた」として、2005年8月末をもって解散しました。
NEBA解散後、エディオンやヤマダ電機などの大手家電量販店約10社により、任意の団体である「大手家電流通懇談会」が設立され、その後2014年に「大手家電流通協会」と名称を変更し、業界団体としての活動を継続しています。
歴代会長には、全日電時代の永長佐京氏（第一家庭電器社長）、NEBA初代会長の谷口正治氏（ラオックス社長）らが名を連ねました。解散時点では、株式会社デンコードー、ギガスケーズデンキ株式会社、サトームセン株式会社、ラオックス株式会社、株式会社エイデン、上新電機株式会社、株式会社ベスト電器など、当時の有力な家電量販店が加盟していました。
関連語：家電量販店、電器店、系列電器店
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