日沼倫太郎

日沼倫太郎（ひぬま りんたろう）は、1925年7月3日に栃木県下都賀郡（現在の小山市）に生まれ、1968年7月14日に心筋梗塞で亡くなった日本の文芸評論家です。本名は生沼正三（おいぬま しょうぞう）といいます。彼は、国際電気通信株式会社講習所で学び、1944年には朝鮮に赴任しました。戦後は通信技官、日本電信電話公社の社員として働く傍ら、文芸評論家としての活動を行いました。

日沼倫太郎の評論活動は、文学作品の分析に留まらず、社会や文化に対する深い洞察に基づいたものでした。彼は、純文学と大衆文学の境界に注目し、それぞれの価値や役割について考察を深めました。また、現代作家の作品を多角的に分析し、その文学的意義を明らかにしようと努めました。さらに、文明批評にも取り組み、現代社会が抱える問題点を鋭く指摘しました。

日沼倫太郎の著書には、以下のようなものがあります。

『文学の転換』（1964年、南北社）
『現代作家論』（1966年、南北社）
『現代作家案内』（1967年、三一新書）
『純文学と大衆文学の間』（1967年、弘文堂新社）
『偏見の美学 古典と批評 日沼倫太郎評論集』（1967年、桜楓社）
『病める時代』（1967年、番町書房）
『我らが文明の騒音と沈黙 日沼倫太郎評論集』（1970年、新潮社）
『自殺者の系譜 日沼倫太郎遺稿集』（1971年、豊島書房）

これらの著書を通じて、日沼倫太郎は、文学、社会、文化に対する独自の視点を展開しました。彼の評論は、鋭い分析力と深い洞察力に裏打ちされており、現代社会を理解する上で重要な示唆を与えてくれます。

日沼倫太郎は、1968年7月14日に千葉県柏市の病院で心筋梗塞のため急逝しました。戒名は正教院法文信士。その短い生涯の中で、文芸評論家として多くの足跡を残し、その功績は今もなお評価されています。

彼の作品は、没後も『文学の転換』（日本図書センター、1992年）として再刊されており、その思想は、現代の読者にも読み継がれています。日沼倫太郎の評論は、単なる文学批評にとどまらず、社会や文化に対する深い洞察に基づいており、その思想は今日でも学ぶべき点が多くあります。

参考文献
* 日本近代文学大事典（講談社）

もう一度検索