日清ランチ

日清ランチ：時代の先をゆく加工米飯、そして失敗から学んだ教訓

1967年、日清食品は画期的な商品「日清ランチ」を世に送り出しました。これは、同社を代表するヒット商品であるチキンラーメンの技術を応用した加工米飯です。蒸した米を油で揚げるという、当時としては革新的な製法が採用されていました。

発売の背景には、1960年代の日本の食生活の変化がありました。玄米の豊作による余剰米問題と、洋風化が進む食卓。日清食品は、米の消費喚起を図るべく、この新製品開発に乗り出しました。

発売前の発表会では、報道陣が試食に殺到。翌日のメディア報道は大きく、消費者の期待は高まりました。発売当初は、問屋からの発注が殺到するなど、順調な滑り出しを見せました。

しかし、発売後の反応は一転します。消費者から寄せられたのは、厳しい批判でした。「油っぽい」「調理が難しい」といった声が多数を占めました。実際、調理後の油切れの悪さが大きな問題となり、食感が不評だったのです。

調理方法もまた、ハードルとなりました。フライパンを使った調理が必要でしたが、水加減や火加減を間違えると焦げ付きやすく、調理に慣れていない消費者にとっては大きな負担でした。百貨店やスーパーマーケットでの実演販売では、これらの点が改めて指摘され、さらに値段に見合わない量が少ないという意見も上がりました。

メディアによる商品の説明不足も、不評の一因となりました。チャーハンやチキンライスの素と誤解した消費者も多く、米飯の即席食品という概念自体が、日本の米食文化に馴染まないという側面もありました。

日清食品は、「日清ランチ10万人プレゼント」キャンペーンなどを実施して販売促進に努めましたが、販売量は伸び悩みます。当時の食パンが40円、インスタントラーメンの特売品が20円前後だった中で、日清ランチは60円という価格設定でした。これは原材料である玄米の価格に起因するものでしたが、消費者の目には、手軽に作れるチャーハンやチキンライスと比較して割高に見えたようです。

結局、日清食品は「時期尚早」と判断し、日清ランチの販売を中止します。当初、工場建設を予定していた用地は、後に大ヒット商品となるカップヌードルの専門工場として活用されました。

その後、1975年には日清ランチを前身とする「カップライス」を発売しましたが、これも間もなく販売中止となります。これらの経験を経て、日清食品は「日清GoFan」などの商品開発を行い、2010年には「カップヌードルごはん」、2014年には「カレーメシ」をはじめとする「カップメシシリーズ」を発売。これらの商品は大きな成功を収め、日清ランチの失敗から得た教訓が、後の成功に繋がったと言えるでしょう。日清ランチの失敗は、単なる失敗に終わらず、後のカップ麺、カップ飯市場における日清食品の成功の礎となりました。消費者ニーズの正確な把握と、調理の簡便性、価格設定など、様々な面での改善が、後の商品開発に活かされたのです。

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