日産・R382
日産・R382
日産・R382（にっさん・アールさんはちに）は、日産自動車が1969年の日本グランプリに向けて開発した二座席レーシングカーです。これは当時の国際自動車連盟（FIA）の規定に基づくグループ7に位置づけられています。
開発の背景
1968年、日本グランプリを制覇した日産は、次なる目標として全て自社製のレーシングマシンによる優勝を目指しました。前モデルのR381ではシボレー製エンジンを使用していたため、自社開発のGRX-1型V12エンジン（排気量5.0リットル）が新たに開発され、R381に搭載されてテストが行われました。
新型のR382がシェイクダウンを行ったのは1969年7月で、当時の日本グランプリは10月に開催されることになっていました。R382のシャーシは、コクピット周りのメインセルにアルミのスペースフレームを採用し、補強としてアルミモノコックが使用されました。エンジンはストレスメンバーとして機能し、これにより全体の剛性が向上しました。また、前作のR381で採用されていた可変ウィングが規制されていたため、R382のリアセクションはダックテール形状に変更され、よりウェッジシェイプのデザインに仕上げられています。
さらに、日産はR382に搭載するエンジンを6.0リットルに拡大したGRX-3型に進化させ、その2号車が8月にシェイクダウンを行いました。しかし、この6リットルエンジンの公表は、グランプリの決勝日からわずか2日前となりました。
レースでの成績
1969年の日本グランプリには、ポルシェ917やトヨタ7などの強豪が参戦し、このレースは日本のモータースポーツ史において特筆すべき一戦となりました。R382は高橋国光、都平健二、北野元、黒澤元治の4人のドライバーが搭乗し、3台が出場しました。
予選ではポルシェやトヨタを押さえ込んで1-2-3の好成績を収めました。レース本番では、クラッチへの負担を軽減するため慎重なスタートを切るものの、すぐにポルシェやトヨタを抜き去って、R382は1-2-3フォーメーションを形成しました。高橋と都平の車両はトラブルに見舞われましたが、黒澤と北野のマシンが1位、2位でフィニッシュし、日産は連続してグランプリ制覇を達成しました。
その後、1970年の富士インター300マイルレースにもR382は参加しましたが、その時の日産は公害対策に集中するため、70年日本グランプリを欠場することを決定しました。これがR38シリーズにとって最後のレースとなり、その後優勝車両はアメリカのCan-Amシリーズへの参加を求めて米国に送られましたが、長らく倉庫に放置された状態が続きました。
継承と復元
日産の倉庫に保管されていた高橋車と北野車の復元計画が持ち上がりましたが、マグネシウム合金製の部品の劣化が進んでいたため、部品取りとして1台に統合されることになりました。さらに、行方不明だった黒沢車のレプリカが製作されることになりました。
2004年、米国で発見されたマシンが日本に移送され、レストア作業が進められました。同年のニスモフェスティバルでは、復元されたR382が公開され、以降、年末のニスモフェスティバルでデモ走行が行われました。
こうした経緯より、一時的にR382の黒沢車が二台存在することとなりましたが、その後部品取りでカウルとシャシーだけになった北野車も再生され、2013年にはレストアが完了しました。これにより、日本グランプリに参戦した車両が全て実走できる状態で現存していることになりました。
2017年には、黒沢車のレプリカとなっていた高橋車が元の塗装に戻され、結果的にすべての車両が元のシャシーナンバーの状態で現存することとなりました。
スペック（1969年）
- - 全長: 4,045mm
- - 全幅: 1,870mm
- - 全高: 925mm
- - ホイールベース: 2,400mm
- - トレッド: 前 1,470mm / 後 1,370mm
- - 車両重量: 790kg
- - エンジン: GRX-3 (V12・DOHC・4バルブ) 5,954cc
- - 最高出力: 441kW (600ps)以上
- - 最大トルク: 608N・m (62.0kgm)以上
- - サスペンション: 前 ダブルウィッシュボーン / 後 マルチリンク (4リンク)
- - ブレーキ: 前/後 ベンチレーテッドディスク
- - タイヤ: 10.10×15 / 6.00/15.50×15
- - その他: ルーカス燃料噴射
関連項目
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