日産・R390

日産・R390について

日産・R390は、1990年代後半に日産自動車がル・マン24時間レースのために開発したスポーツカーであり、トム・ウォーキンショー・レーシング (TWR)との協力により実現しました。このモデルの名称は、1960年代に活躍したプリンス・R380や日産・R382、R383系列に由来しています。

概要

当車は、名目上はグランドツーリングカー（GT）ですが、その実態はスポーツカーです。これは、1994年に参戦したダウアーポルシェ（ポルシェ・962Cを元にした車両）が先駆けとして知られています。設計はトニー・サウスゲートが担当し、エクステリアデザインにはイアン・カラムが起用されました。プロジェクトは1996年のル・マン24時間レース終了後に開始され、LMP（ル・マンプロトタイプ）とLMGT1（ル・マン・グランドツーリング）を検討した結果、LMGT1が選ばれました。開発の迅速化のため、TWRとの提携が決定され、彼らが開発したジャガー・XJR-15のモノコックが流用されました。

1997年から1998年にかけて活動を行い、フランス西部自動車クラブが定めたLMGT1規定に基づいて参戦しましたが、FIA GT選手権への参加資格はありませんでした。搭載エンジンは1990年代のグループCで使用されていた3.5L・V8ツインターボのVRH35Zをベースにし、制限装置を装着したVRH35Lが使われました。このエンジンはかつての力強さを失っていましたが、それでも優れたパフォーマンスを持っていました。

レースでの成績

R390は1997年にル・マン24時間レースに初めて挑戦し、予備予選ではクラス1位になるなど好スタートを切りました。しかし、トランクスペースの設計変更に伴いリアトランク周囲のトラブルが起こり、結果には繋がりませんでした。1998年には前年の教訓を活かし、ギアボックスの冷却改善や空力アップのための変更を行い、チーム全体の連携を強化しました。その結果、星野一義・鈴木亜久里・影山正彦が乗るマシンが総合3位を獲得し、出走した4台の全車が10位以内で完走しました。この期間に、合計で8台のレース仕様車が制作され、一部は個人に売却されました。

ロードカー

R390の公道用モデルも開発され、1997年に1台が制作されました。しかし、日産の財務状況の悪化により、正式な販売には至りませんでした。もし販売されていた場合、価格は100万ドルが見込まれていました。このロードカーにはレースカーと同じVRH35Lエンジンが搭載されていましたが、性能は抑えられて紹介されています。実際には最高出力558PSを発揮し、0-97km/h加速は3.9秒、1/4マイル走行は11.9秒でした。最高速度については354km/hとされていますが、公式に計測は行われていませんでした。

ロードカーの製作時には、元々赤だったものが後にブルーに塗装され、様々な改造が施されました。特にダックテールスポイラーが取り付けられ、よりスポーティな印象のモデルへと生まれ変わりました。現在、これらのモデルの一つは日産ヘリテージコレクションにて保管されており、レースカーと共に展示されています。

R390は、日産の挑戦と技術力の象徴として、今もなお多くのファンに愛され続けています。

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