日米タイムズ

日米タイムズとは

日米タイムズ（Nichi Bei Times）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州でかつて発行されていた主要な邦字新聞の一つです。1946年に創刊され、2009年9月10日付の紙面を最後に63年の歴史に幕を下ろしました。本社はサンフランシスコ市ブッシュストリート2211番地に置かれ、現地では羅府新報に次いで長い歴史を持つ邦字新聞社として知られていました。廃刊時の社長は岡田幹夫氏、副社長は日系三世のケンジ・タグマ氏でした。海外日系新聞放送協会にも加盟していました。

創刊の背景と黎明期

第二次世界大戦終結の翌年、1946年5月18日、「日米時事新聞社」（合資会社、英語名 Nichibei Times）としてサンフランシスコで産声を上げました。この創刊には、元日米新聞編集長の浅野七之助氏をはじめとする日本人と日系二世の計6名が発起人として関わりました。初代社長には浅野氏が就任しました。

創刊の最も重要な目的は、戦時中、強制収容によって財産や生活基盤を失った在米日本人および日系二世コミュニティーの再建を支えることにありました。

当初、新聞製作はサンフランシスコ日本町のサター通りにあった旧佐野日本語学院の校舎を間借りして行われ、自社印刷機を使用しました。印刷に必要な鉛活字は、廃業した印刷所から購入して活用しました。創刊時は全4ページで、週に3回の発行でした。

創刊から約1年後の1947年には、エディー通りにあるレンガ造りの2階建てガレージを購入して本社を移転し、株式会社へと組織変更しました。この際、資本金10万ドルで株主を募集しましたが、言論の自由と新聞の独立性を確保するため、一人当たりの株式保有額を1千ドルまでに制限する方針が採られました。

創刊からわずか3ヶ月後には、週5日発行の日刊紙へと移行しました。ページ数は変動がありましたが、概ね日本語6ページ、英語2ページの計8ページ構成でした。日本語ページでは、主に移住者である日系一世向けに日米の一般ニュース、日系人関連のニュース、コミュニティーの行事や話題を提供しました。一方、英語ページでは、米国で育った日系二世以降の読者向けに、日系人社会に特化したニュースを中心に掲載しました。新聞発行に加え、企業の名刺やチラシ、領収書などの商業印刷も手がけ、経営を支える重要な柱としました。

日系人社会の権利擁護と報道

日米タイムズは、創刊当初から日系人社会の権利擁護に向けた様々な活動を積極的に報道し、その拡大に貢献しました。創業者である浅野氏が主導したララ物資（第二次世界大戦後に米国から日本へ送られた援助物資）送付運動の報道はその一例です。

また、カリフォルニア州外国人土地法の撤廃運動（1956年撤廃）、日本人移民の帰化権獲得運動（1952年の移民国籍法制定で実現）、そして戦時の強制収容に対する国家賠償運動（1988年の市民の自由法成立による賠償決定）など、長年にわたり日系人の地位向上と差別の解消を目指す活動を積極的に報道し続けました。

日本のメディアとの連携

初代社長の浅野七之助氏が、朝日新聞社の通信員を兼務していたこともあり、エディー通りへの本社移転時には朝日新聞社から日本語の鉛活字を譲り受けて使用するようになりました。

第二次世界大戦直後の1946年頃は、日米間の人的往来が困難であったため、日米タイムズの記者が朝日新聞社や東京新聞社の通信員も兼務し、米国のニュースを日本へ配信する役割も担いました。さらに、共同通信社や時事通信社からも記事の配信を受けていました。

1970年代以降の展開と廃刊

本社ビルはサンフランシスコ市の都市再開発計画に伴い市に売却され、1972年にはサンフランシスコ日本町の北西に位置するブッシュ通り2211番地に新たな自社ビル（約975平方メートル）を建設・移転しました。この時、印刷技術の進化に合わせてオフセット輪転機を導入しました。

以前は日本語と英語が合同した紙面でしたが、創刊60周年を控えた2006年からは、日本語版の「日米タイムズ」（大判、全12ページ）と英語版の「日米タイムズウイークリー」（タブロイド版）として独立した形で発行されるようになりました。日本語版は週3日（火、木、土曜日）、英語版は週1回（木曜日）発行され、カリフォルニア州北部、特にサンフランシスコや州都サクラメント、サンノゼといった地域の住民を中心に購読されていました。2006年時点での発行部数は約8,000部でした。

長年の歴史を刻んできましたが、経営状況の悪化などにより、2009年9月10日付の紙面をもって廃刊となりました。

廃刊後の動き

廃刊後、特に英語版週刊紙「日米タイムズウイークリー」については、日系米国人コミュニティーにとって独自の報道機関が不可欠であるとの声が多く上がりました。これに応える形で、有志が中心となり非営利団体「日米財団」（Nichi Bei Foundation）を設立し、英語版の発行を非営利事業として継続するための準備が進められています。

歴代社長

初代 浅野 七之助
2代目 池添 一馬
3代目 滑川 厳
4代目 梅津 孜
5代目 岡田 幹夫（～2009年9月）

主な出来事

1946年5月18日: サンフランシスコ、サター通りにて合資会社「日米時事新聞社」として創立。
1947年: エディー通りへ移転、株式会社へ移行。
1948年4月: 帰還復興史・住所録を発行。
1960年5月18日: 日米修好百周年記念祝賀記念号を発行。
1972年: ブッシュ通りへ移転、オフセット輪転機を導入。
1975年10月8日: 天皇皇后両陛下の訪米記念号を発行。
1990年9月7日: サンノゼ日本町百周年記念号を発行。
1994年6月: 天皇皇后両陛下訪米記念特集号を発行（複数日）。
1996年: コンピュータを使用した製作体制へ移行。
1998年: 日米時事新聞50周年記念誌を発行。
2004年: 日本政府より外務大臣表彰を受賞。
2005年: 海外日系新聞放送協会大賞を受賞。
2006年: サンフランシスコ日本町百周年記念特別号を発行。
* 2009年9月10日: 最終号発行をもって廃刊。

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