日精丸

日精丸（にっせいまる）

日精丸は、日本国籍を持つ原油タンカーであり、日本の船舶史上最大の船でもあります。この船はグロブティック・トーキョー型タンカーの3番目となる存在で、建造当時（1975年）には世界で最大のタンカーとして注目を集めました。日精丸は、日本国内で建造された船としても非常に大きな存在であり、当時就航していた「シーワイズ・ジャイアント（現在のノック・ネヴィス）」、「エッソ・アトランティック」、「エッソ・パシフィック」に次ぐ規模を誇ります。

来歴

日本の高度経済成長期には、石油の消費が急激に拡大し、それに伴い中東からの石油輸送に従事するタンカーも大型化が進みました。これを受けて、日本石油（現・ENEOS）は、既存のタンカーよりもさらに大きな船を建造することを決定しました。まず建造されたのが「グロブティック・トーキョー」で、次に「グロブティック・ロンドン」、そして本船である日精丸が続きました。日精丸の建造は、石川島播磨重工（現在のジャパン マリンユナイテッド）の呉第一工場で行われ、1974年12月に進水し、翌1975年6月に就航しました。

日精丸は、鹿児島県の喜入町（現在の鹿児島市喜入）にある日本石油の基地と中東地域を接続し、2000年までに128回の往復を行い、航走距離は180万km、総輸送量は8億4000万キロリットルに達しました。

その航海の中でも特筆すべきは、1980年から4年間のイラン・イラク戦争の最中に、石油公団の洋上備蓄船としても機能した点です。また、1983年にはホルムズ海峡でミサイル攻撃を受けましたが、被害はごくわずかでした。さらに、1989年にはベトナムからの避難民、いわゆるボートピープルを救助する活動も行われ、日精丸はその任務を通じて人道的な役割も果たしました。

しかし、25年間にわたる輸送活動の後、日精丸は2重構造（ダブル・ハル）でないことが国際海事機関の規定に適合していなかったため、改造には巨額の費用がかかることがわかりました。そのため、2000年にシンガポールに売却し、船名は「ARCTIC BLUE」に変更されました。最終的には2003年に解体され、その歴史の幕を閉じました。

その他の情報

日精丸の就役翌年には、1976年に郵政省から特集切手として日精丸が印刷された50円切手が発行されました。また、2005年には、建造地である呉市にある「呉市海事歴史科学館」（通称：大和ミュージアム）に、運航していた新日本石油のタンカーから日精丸の100分の1スケールの模型が寄贈され、一般に公開されています。

さらに呉市には「飛躍の塔」があり、その足元には日精丸のスクリューを実寸大でデザインしたタイルが敷かれています。これらの展示や記念物は、日精丸の偉業とその名を記憶に留める大切な文化遺産となっています。

参考文献

• - 船舶技術協会『船の科学』1975年7月号 第28巻第7号
• - 海人社『世界の艦船』1999年11月号 No.560

外部リンク

• - Auke Visser's Supertankers

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