日系ペルー人

日系ペルー人とは

日系ペルー人とは、日本人の血を引くペルー人のことを指します。ペルーにおける日系人の歴史は古く、17世紀初頭にはその存在が確認されています。しかし、本格的な集団移民が始まったのは19世紀末のことです。現在、日系ペルー人はペルー社会において重要な役割を果たしており、その数は数十万人に達すると推定されています。

歴史

初期の日本人

ペルーにおける日本人の最古の記録は、1614年のリマ市人口調査に登場する20人です。また、1608年の公証遺言状には「ミゲル・デ・シルバ」という日本国籍の人物の名前が記されています。これらの記録から、17世紀初頭には既に日本人がペルーに渡っていたことがわかります。

奴隷制廃止と労働力不足

ペルーでは、独立後の1854年に奴隷制が廃止され、大農園主は労働力不足に悩まされるようになりました。そこで、ヨーロッパからの移民を導入しようとしましたが、多くのヨーロッパ人は経済成長の著しいアルゼンチンやブラジルに向かい、ペルーに移住する人はわずかでした。そのため、ペルーの支配層はアジアからの移民を求め、1849年には中国からの移民が始まりました。しかし、中国からの移民は劣悪な環境で働かされ、社会問題となりました。

日秘修交通商航海仮条約

1873年、ペルーと日本は日秘修交通商航海仮条約を締結しました。これは、マリア・ルス号事件をきっかけに両国が接触を持ったことがきっかけです。ペルーは南米諸国の中で日本と最初に国交を樹立した国となりました。

日本人移民の開始

1899年、森岡商会を仲介として、日本からペルーへの集団移民が始まりました。最初の移民船「佐倉丸」には790人の日本人が乗船し、ペルーに到着しました。これは、南米への集団移民としては最も古いものの一つです。移民の出身地は新潟、山口、広島が多く、その後は沖縄や九州の出身者が増えていきました。

移住後の困難

移住した日本人は、言葉の壁や文化の違い、過酷な労働環境、農園主による賃金未払いなどに苦しみました。マラリアやチフスなどの風土病にも悩まされ、多くの死者が出ました。そのため、外務省は調査を行い、移民の全員帰国も検討されましたが、最終的には農場主側の待遇改善と、移民自身の適応によって、対立は終息に向かいました。

組織化と反感

現地で成功した移住者は、リマに集まり、理容店や雑貨店を営みました。日系人同士で頼母子講を組織し、事業を拡大していきました。1917年にはペルー中央日本人会が結成され、1920年にはリマ日本人学校が創設されました。しかし、日系人は特定の職種に集中し、ペルー社会との交流をあまり持たなかったため、現地住民から反感を買うようになりました。

排日暴動と強制収容

1930年代に入り、日米関係が悪化すると、ペルー政府や支配層も日系人への反感を強めました。日系人内部のトラブルが発端となった古屋事件をきっかけに、1940年にはリマ排日暴動事件が発生し、日系人の商店が襲撃されました。1941年の太平洋戦争開戦後には、ペルー政府は日系人の集会を禁止し、資産を凍結、さらに約2,000人の日系人をアメリカの強制収容所に送りました。中南米からアメリカの強制収容所に送られた日系人の多くはペルー出身者でした。

戦後の再建とフジモリ大統領

第二次世界大戦後、ペルーの日系社会は「勝ち組」と「負け組」の対立に悩まされましたが、1950年には太平洋クラブが結成され、1955年にはペルー中央日本人会が復活しました。1990年には、日系人のアルベルト・フジモリが大統領に就任しました。フジモリ大統領は新自由主義政策を推進し、テロ組織を壊滅させるなどしてペルーの社会を立て直しましたが、後に汚職が明らかになり、日系人のイメージは傷つきました。

政府の謝罪

2011年、ペルー政府は第二次世界大戦中に日系人をアメリカの強制収容所に送ったことについて、公式に謝罪しました。

言語

三世以降の日系ペルー人の日本語能力は高くなく、多くの日系人はスペイン語を話します。

移住

1980年代後半から、ペルー経済の停滞により、日本やアメリカに労働移住する人が多くなりました。日本では多くのペルー人が「デカセギ」として働き、2012年には約5万人のペルー国籍者が在留していました。また、日本には3万人以上の永住者も存在しています。

ペルーは出稼ぎの送り出し国として知られ、1980年代以降、多くのペルー人がアメリカ、スペイン、アルゼンチンなどに移民しています。日本にも1990年の入管法改正を機に多くの日系人が移住しており、ペルー日系社会の半分が日本で生活していると推定されています。

著名な日系ペルー人

日系ペルー人は、政治、スポーツ、文化など、様々な分野で活躍しています。その中には、アルベルト・フジモリ元大統領、ケイコ・フジモリ議員、サッカー選手のエルネスト・アラカキ、画家のティルサ・ツチヤなどがいます。

その他の情報

ペルーには、南米最古の仏教寺院である慈恩寺があります。また、ペルーにはかつて邦字新聞も存在していました。

日系ペルー人は、ペルーの歴史と文化の中で重要な役割を果たしてきました。彼らの歴史は、移民の苦難と成功の物語であり、多文化社会におけるアイデンティティの重要性を示しています。

主な参考文献

細谷広美：編著『ペルーを知るための62章』明石書店 2004/01
高橋幸春：著『日系人の歴史を知ろう』岩波ジュニア新書 2008/09
在ペルー日系人社会実態調査委員会『日本人ペルー移住史・ペルー国における日系人社会』在ペルー日系人社会実態調査委員会、1969年。

関連する項目

ハポニョール
慈恩寺
邦字新聞
ブラジル系日本人
アルゼンチン系日本人
在日ペルー人
不就学
ペルー学校
日本の外国人

外部リンク

* 財団法人 海外日系人協会

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