日系ロシア人

日系ロシア人：歴史と現在

日系ロシア人とは、日本人の血を引くロシア国籍の市民を指します。彼らの歴史は、江戸時代初期に遡り、漂流民としてロシアにたどり着いた日本人がその起源となっています。1696年、カムチャツカ半島に漂着した伝兵衛はその代表的な例であり、後にロシアに帰化し、正教会に改宗しました。その後も、多くの漂流民がロシア極東各地に流れ着き、中には日本語学校の教師を務める者も現れました。1738年には、ゴンザによって史上初の露和辞典が編集されるなど、日系ロシア人は日露関係の初期段階から重要な役割を果たしました。

1855年の[日露和親条約]]締結以降、日露間の国交が正式に樹立されると、貿易が盛んになり、ウラジオストクは一大拠点として発展しました。日露戦争]を経て、両国の貿易は再開され、1910年代半ばには[[ウラジオストクに約6000人、ハバロフスクに約600人の日本人が居住する日本人街が形成されました。しかし、1917年のロシア革命とそれに続くシベリア出兵、そして日本人居留民虐殺事件である尼港事件などの影響で、多くの日本人が帰国を余儀なくされ、ウラジオストクの日本人社会は壊滅的な打撃を受けました。

ソ連政府は1925年に日ソ基本条約を締結し、対日国交を回復させましたが、1941年の太平洋戦争開始により、カムチャツカ半島での漁業権に基づく日本人の居住は中断されました。1945年のソ連対日参戦時には、ソ連領内に居住する日本人はごく少数でした。しかし、第二次世界大戦後には、ソ連に侵攻・占領された地域に多くの日本人が取り残され、約70万人の日本軍捕虜がシベリア抑留を経験しました。また、南樺太に居住していた約40万人の日本人の多くは日本へ引き揚げましたが、帰国できなかった人も少なくありませんでした。2001年時点で、サハリンには約400人の残留日本人が存在していました。シベリア抑留者も、多くは1956年の日ソ共同宣言後までに帰国しましたが、ソ連に帰化し、そのまま生活を続けた人もいました。近年では、ロシア連邦内各地で、シベリア抑留者の子孫や、ロシア残留孤児の存在が確認されており、ロシアや旧ソ連地域の日系人の実態解明は、依然として重要な課題となっています。

戦前からの日本共産党員など、社会主義運動に関わった人々の中には、ソ連で教育や滞在を経験し、そのままソ連にとどまった者もいました。ソ連末期からロシア連邦成立後にかけては、日本への出国や日本国民の居住が緩和され、ロシア領内で生まれた日本人の子供や日露間の結婚によって生まれた子供が増加しました。これらの子供の中には、ロシア国籍を取得し日系ロシア人となる者もいます。

著名な日系ロシア人としては、女優の岡田嘉子、政治家のイリーナ・ハカマダ、政治家・実業家のニシヤマ・ソウキチ、フィギュアスケート選手の川口悠子、サッカー選手のイッペイ・シノヅカなどが挙げられます。彼らの存在は、日系ロシア人の歴史と多様性を象徴しています。日系ロシア人の数は正確には把握されていませんが、歴史的背景、そして日露両国の関係性から、今後もその存在は注目に値するでしょう。

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