日給簡

日給簡について

日給簡（にっきゅうのふだ・ひだまいのふだ）は、日本の古代朝廷において、官庁や院宮に在籍する者の出勤を記録するための帳簿でした。この制度は出仕者が日々の出勤状況を記録し、それを基にして月ごとの勤務状況を集計し考課資料とする目的で用いられました。特に、清涼殿の殿上間における出勤記録が著名で、この特定の帳簿は殿上簡（てんじょうのふだ）または仙籍（せんせき）とも呼ばれます。

歴史的背景

日給簡が初めて使用された時期は不明ですが、宇多天皇（887〜897年）による『寛平御遺誡』には女蔵人の日給に関する記載があることから、もう少し前の時代に遡る可能性があります。また、950年には憲平親王の立太子に際し、東宮御所用の日給簡が製作されたことが記録されています。

殿上の日給簡は、清涼殿の殿上間の西北に位置し、日記の唐櫃の隣に置かれていました。これに関する江戸時代の記録によると、長さは約160cm、上辺幅が約24cm、下辺幅約21cmの木製で、3段から構成されていました。上段には四位・五位・六位の蔵人や殿上人の官位と氏名が記入され、昇殿が許可された者はこの帳簿にその名前が加えられました。逆に、勤務不良や犯罪によって昇殿を停止された者は、名前が帳簿から削除されることになりました。

このため、昇殿停止を「除籍」と呼ぶことがありました。日給簡は、各段に放紙（はなちがみ）という紙が貼られており、その紙に出勤状況が記録されました。出勤記録は午前と午後の2回、蔵人によって行われ、午前中は日給簡が収められた袋から取り出し、出勤状況を記入しました。

出勤の記録

特に、3月から8月までの出勤時間は辰刻、9月から翌年2月までは巳刻と定められ、この時に前日の宿直を担当した者については「夕」の字が加えられ、その日の出勤者にはその日の干支が記入されました。その後、日給簡は元の位置に戻され、特定の時間（未二刻や未三刻）になると改めて出勤状況が記録されます。この手続きでは、出勤せずに届出をした者には「不」の字、出勤を未達の者には「仮」の字が記入されました。これが「簡を封じる」と呼ばれるもので、この後に出勤しても欠勤扱いとなりましたが、ただし、記録に使った硯の水が乾く前に出勤すれば認められることもありました。

記録が終われば、日給簡は絹の袋に入れられ、改めて壁に立て掛けられました。また、正月三が日や天皇の御物忌の際には、特別にこの簡を封ぜずに立てられることがありました。

月次の手続き

各月の1日には、蔵人が日給簡に貼られた放紙を剥がし、新たに貼り替える作業が行われます。また、前月の放紙を基に上日と上夜を集計し、その結果を「月奏」として天皇に報告する儀式もあります。

京の御所には安政年間に作成された高さ約190cmの日給簡が現存しており、今もなおその重要性を物語っています。こうした記録や制度は、当時の日本の制度や社会を知るための貴重な資料となっています。

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