昇殿

昇殿制度について

昇殿（しょうでん）は、日本の平安時代以降の朝廷において重要な役割を果たした制度で、特定の官人が内裏清涼殿に位置する殿上の間に上ることを認められることを指します。この昇殿を通して形成された身分の体系は、昇殿制（しょうでんせい）と呼ばれ、政治的および社会的な格付けを生む物として機能しました。

昇殿の制度とその背景

昇殿が認められるのは、原則として三位以上の公卿ですが、四位以下の一部の官人や蔵人も天皇からの特別な許可によって昇殿が許されます。この許可は「勅許」と呼ばれ、天皇の代替わりによって効力を失うことが特徴的です。四位以下の昇殿を許された者たちは、殿上人として特別扱いを受け、位階や官職とは異なる身分体系の一部として扱われました。

中世以降、この昇殿制度は家格に基づく昇殿の権利を持つ家系が明確に定義され、殿上人になることができる家を「堂上家」と呼び、そのほかの家を「地下家」と区別するようになりました。また、院や女院、さらには皇后や東宮にも独自の昇殿制度が存在し、それぞれの昇殿を区別するため、内裏のものは「内の昇殿」、院のものは「院の昇殿」と呼ばれています。

昇殿制度の発展と変遷

昇殿制度は、律令制に基づいて設置された侍従などの官職から、天皇の秘書的な役割を持つ蔵人の導入とともに進化を遂げていきました。9世紀初頭の嵯峨天皇の時代に、天皇の私的側近を選ぶ制度として確立し、宇多天皇の時代にはほぼ完成の域に達しました。この時期、昇殿を行う場所は清涼殿に定着し、殿上人の職務も公的なものとなり、活動が制度化されました。

昇殿人数も当初は約30名程度でしたが、次第に増加し、院政期には80名以上にまで膨れ上がりました。その一方で、昇殿が許可される基準は家柄によって決定され、特に官位の世襲化が進むにつれ、昇殿を受けることができる資格が大きく変化していきました。

昇殿とその社会的意義

昇殿の制度は、天皇との私的関係に基づいて許可されるものであり、律令制に基づく公的な官位とは異なる順位体系を形成しました。昇殿を認められる者は昇殿宣旨を受ける必要があり、その結果、殿上人と呼ばれる地位が与えられました。この地位は、四位や五位の官人を主に対象としていましたが、選ばれる人の中には六位の者も稀に含まれることがありました。

昇殿宣旨を受けた者は、その名前が日給簡に記録され、殿上での勤務において重要な役割を果たしました。そのため、昇殿はただの形式的な上昇に留まらず、実際の公務や儀式への参加を通じて重要な機能を果たしました。また、昇殿を無断で辞めた者や怠慢な行動を取った者は、昇殿が停止される「除籍」処分に至ることもあり、これによってその人の立場も厳格に管理されていました。

昇殿制は日本の平安時代における権力と地位の象徴であり、後世にわたってもその影響は大きく、社会的な身分制度の基盤となりました。特に、院政期においては、内裏への昇殿と院への昇殿は格付けが異なり、政治的な動きや階級を反映するものとして捉えられました。

まとめ

このように、昇殿制度は日本の古代・中世における重要な社会的・政治的構造を形成する要素でした。家柄や天皇との密接な関係が評価され、権力や地位を示す手段として機能した昇殿は、政治的な慣習や文化の中で非常に重要な役割を果たしていました。

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