日輪兵舎

日輪兵舎について

日輪兵舎（にちりんへいしゃ）は、1938年から茨城県の内原村に存在した満蒙開拓青少年義勇軍訓練所内に建設された、宿舎兼教室の木造建物です。この建物は、訓練生が自力で容易に建設できるようにデザインされ、特にその円形の特徴が印象的でした。また、安価に大人数を収容できるため、戦時中の訓練生によって数百棟が短期間で建設されました。日輪兵舎は満蒙開拓青少年義勇軍の象徴ともなり、さまざまな文献において取り上げられる存在となりました。

内原訓練所の日輪兵舎

日輪兵舎は、加藤完治が所長を務める満蒙開拓青少年義勇軍訓練所において、建築家の古賀弘人の設計により、開設当初から数多く建てられました。この建物は、標準的には一棟あたり60人を収容でき、建築の知識がない少年たちでも即日で建設可能な工夫がされていました。記事によれば、当時の訓練生たちは、集まって1日で1棟を完成させていたことが報告されています。また、建設コストは非常に安く、通常の住宅と比べて圧倒的なコストパフォーマンスを誇っていたことも特徴です。特に、日輪の形状は天皇崇拝にも関連があることから、当時の時代背景とも深く関わっていました。

内原訓練所では、戦争の終わりまでに347棟の日輪兵舎が建設されたとされ、その数は他のどの訓練施設とも比べ物にならないほどです。その独特な姿勢は、ニュース映画や文芸作品などでも取り上げられました。

建築担当者とその影響

日輪兵舎の主な設計者である古賀弘人は、1893年に熊本市で生まれ、若年で満州へ渡り建築の道を歩みました。彼の着想は1932年まで遡り、この時期にさまざまな試作的建物の設計を重ねてきました。また、内原訓練所で建築班の主任を務めた渡辺亀一郎は、当時の建設に多大な貢献をしましたが、完成前に急逝してしまったことも歴史的逸話の一部です。

日輪兵舎の全国的な普及

内原訓練所の日輪兵舎の成功は、全国各地に波及しました。北海道から九州に至るまで、学校や教育団体、移民関係者によって同様の建物が建設され、これらは通常「日輪舎」や「日の丸道場」と呼ばれることがありました。このように模倣された建物は約30カ所に及び、その目的はそれぞれ異なるものでしたが、日輪兵舎の形式を基にした建設が行われました。特に注目すべきは、地域の青年団といった団体が修養の場として設立した場合です。

台湾では、1941年頃に設置された皇民化教育施設で日輪兵舎が建設された例もあります。

現存する日輪兵舎

戦後、ほとんどの内原の日輪兵舎は解体され、その現存しているものは数少ないです。しかし、いくつかの例が歴史的価値をもって保存されています。例えば、山形県のカムロファーム倶楽部日輪舎は、1943年に青少年に農業訓練を提供する目的で建設され、現在はリクリエーション施設として利用されています。また、長野県の南安曇農業高等学校にある日輪舎は、戦時中に地元の生徒たちによって建設され、現在は登録有形文化財に指定されています。

日輪兵舎の意義

このように、日輪兵舎は単なる宿舎にとどまらず、特異な建築形態から近代日本の歴史における重要な存在となっていました。その影響は現代でも見られ、地域社会の活動や青少年育成に一役買ったことが評価されています。

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