加藤完治

加藤完治の生涯

加藤完治は、1884年に東京で生まれ、教育者、農本主義者、剣道家として多岐にわたる分野で活躍しました。東京帝国大学農科大学を卒業後、内務省勤務や農業訓練所所長を経て、愛知県立安城農林学校で教鞭をとりました。その後、茨城県に日本国民高等学校を創立し、農民子弟の教育に尽力しました。彼の教育方針は、入学試験の点数ではなく、生徒の潜在能力を重視するものでした。また、武道による人間教育を提唱し、剣道の指導にも力を入れました。

農本主義への傾倒と満州移民政策

加藤は、当初は熱心なキリスト教徒でしたが、後に古神道に改宗し、筧克彦の古神道論に基づく農本主義を掲げました。満洲事変後、拓務省に招聘され、関東軍将校の東宮鉄男とともに満蒙開拓移民を推進しました。この政策は、日本の食糧不足や農村の過剰人口の解消を目的としていましたが、実際にはソ連対策を意識した軍部の思惑も絡んでいました。

1932年、帝国議会に満蒙開拓五カ年計画が提案されましたが、当時の蔵相であった高橋是清によって握りつぶされました。しかし、加藤は政府首脳に移民政策を訴え続け、1936年には関東軍が「満洲農業移民百万戸移住計画」を発表し、満州への開拓移民が本格化しました。

加藤は、農林省や拓務省の関係者との会合で、移民政策の必要性を強く主張しました。彼は、資本家が労働力として移民を嫌っていると批判し、高橋是清が暗殺された理由も資本家の代弁者であったからだと主張しました。また、土地の確保についても、強引な手段も辞さない姿勢を示し、役人からは「ドロボウみたいだ」と呆れられる場面もありました。

満蒙開拓青少年義勇軍の設立

1937年、加藤は満蒙開拓青少年義勇軍編成に関する建白書を政府に提出し、認められると、翌年には茨城県に満蒙開拓青少年義勇軍訓練所を開設し、自ら所長となりました。彼は、ここで約8万6千人を育成し、「満州開拓の父」と呼ばれました。しかし、これらの開拓移民は、ソ連進攻の際の盾や抗日分子対策、関東軍への兵員・食糧の供給源として利用される側面もあり、1945年のソ連進攻時には多くの犠牲者を出しました。

戦後と加藤の評価

戦後、加藤は公職追放の対象となり、一時的に入植生活を送りました。満蒙開拓青少年義勇軍の訓練所の生徒だった笛田道雄は、加藤を「厳しいが人なつっこい人」と評する一方で、加藤が満州へ行った開拓者の死を厭わない発言をしたと怒って語っています。加藤自身は、終戦の詔勅を聞いて茫然自失となり、その後は自己弁護の言葉を述べています。

加藤の開拓団問題に対する世間の批判は厳しく、戦犯として召喚されたという説もありますが、実際には公職追放にとどまりました。その後、日本国民高等学校の校長に復帰し、名誉[[校長]]となりました。1967年、肝臓癌で亡くなりました。

加藤完治の生涯は、教育者としての貢献と、満州開拓移民を推進した複雑な側面を持ち合わせています。彼の行動は、当時の社会情勢と密接に結びついており、現代においても様々な議論を呼んでいます。

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