日野・MH

日野自動車 MH：はしご車専用シャーシの詳細解説

MHは、日野自動車が製造するはしご車専用シャーシであり、消防車業界でトップシェアを誇るモリタの「スーパージャイロラダー」シリーズの基盤となっています。このシャーシは、消防活動に特化した設計と、日野自動車とモリタの共同開発による信頼性が特徴です。

概要

1991年9月に、モリタのはしご車「スーパージャイロラダー」シリーズ専用シャーシとして登場しました。消防車専用ということもあり、全車ダブルキャブ仕様で、4WS（四輪操舵）やオートマチックトランスミッションを装備しています。また、空気呼吸器（空気ボンベ）を背負ったまま座れるリアシートなど、消防隊員の負担を軽減する工夫が凝らされています。はしごは30mから40mまで対応しており、より高層の建物に対応する40m以上のモデルでは、日野プロフィアの4軸車「FW」がベースとして使用されています。

フロント部分には日野とモリタの両方のロゴが入り、共同開発車であることを示しています。

歴史

初代（1991年 - 2003年）：U-PR2FNAF/KC-PR4FPDF/KL-PR4FPHF

「スーパージャイロラダーMH」として1991年9月に登場。インパネは専用設計でありながら、ステアリングやエアコンの操作パネルなどには日野車のパーツが流用されています。直線基調のデザインは高く評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。エンジンはV型8気筒のF17Eを搭載。トランスミッションはZF製のATで、3軸車はインパネ組み込み型のボタン式、2軸車はフロア式を採用しています。ブレーキはフルエア式で、乗降ステップはドアの開閉に連動して空気圧で展開・格納される機構を備えています。

ABS（アンチロック・ブレーキ・システム）も標準装備されており、3軸車には4WSが採用されました。ヘッドライトは、当時のクルージングレンジャーやスーパードルフィンプロフィアからの流用です。

1995年には、CI（コーポレートアイデンティティ）導入に伴い、日野のシンボルマークが変更され、エンジンもF21Cに変更されて平成6年排出ガス規制に適合しました。ただし、他の日野車とは異なり、ステアリングの形状は変更されませんでした。

1998年には、ヘッドランプの形状が変更されています。

2000年には、平成11年排出ガス規制に適合しました。

2代目（2003年 - 現在）：PK-PR2PPWF/BDG-PR1APYF/LDG-PR1APBF/QDG-PR1APEF/2DG-PR1APJF

2003年11月に東京国際消防防災展で発表され、翌2004年4月に発売が開始されました。車名をMHII Max.に変更。FRP製のキャブと前ボデーを採用し、オートエアコンを装備。エンジンはプロフィア用の直列6気筒エンジン「P11C」を搭載し、新短期排出ガス規制に適合しました。オプションで「DPR（ディーゼル微粒子捕集フィルター）」を装着した車両は、超低PM排出ディーゼル車（☆☆☆☆）の認定を受けています。また、LED警光灯が採用され、キャビン上部とフロントバンパーに埋め込まれました。ステアリングはプロフィアと同じタイプですが、エアバッグは装備されていません。このモデルから全車フロア式ATとなっています。ヘッドライトはレンジャープロ、プロフィアからの流用です。

2006年には、前面警光灯の形状が丸型から角型に変更されました。

2007年には、エンジンがA09Cに変更され、平成17年（新長期）排出ガス規制に適合。上部赤色灯・標識灯カバーが大型化され、車名もMH-IIに変更されました。

2010年には、DPRと尿素SCRシステムを組み合わせたクリーンディーゼルシステム「AIR LOOP」の導入に伴い、平成21年（ポスト新長期）排出ガス規制に適合しました。

2014年には、低排出ガス重量車の認定を受け、型式が変更されました。

2017年には、平成28年（ポストポスト新長期）排出ガス規制に適合しました。

2021年には、ヘッドライトがウインカー一体型LEDに変更されました。

派生型

2軸型

全長が短縮された分、収納ボックスが小型化されており、梯子も30mが最大で4WSは装備されません。主に東京消防庁向け仕様ですが、富山県砺波地域消防組合砺波消防署にも25m型が配備されています。

屈折はしご車仕様（初代のみ）

20m以上の3節屈折梯子を装備した型。バスケットを外した屈折放水車型も存在します。

大型化学車仕様（初代のみ）

梯子装備部を積載スペースとし、遠隔操作式の放水砲を装備しています。