日野強

日野強の生涯：軍人、探検家、そして宗教家へ

日野強（ひの つとむ、1866年1月23日 - 1920年12月23日）は、日本の探検家であり、大日本帝国陸軍の軍人でした。幼名は熊吉。戸籍上の読みは「つとむ」ですが、中国での活動時は「きょう」と呼ばれることが多く、東京地学協会や出口王仁三郎からは「つよし」と呼ばれていました。日野自身は「きょう」の読みを好み、公的な場でのみ「つとむ」を用いたとされています。

若年期と軍人としてのキャリア

日野は伊予小松町で生まれ、小学校卒業後に愛媛県師範学校に進学しました。教職に就いたものの、小学校の環境に失望し、立身出世を志して陸軍に入隊しました。1889年7月に陸軍士官学校を卒業し、陸軍歩兵少尉に任官。その後、中尉へと昇進しました。

日清戦争勃発時には、混成第九旅団に所属し釜山に上陸。終戦後も順調にキャリアを重ね、大尉、台湾守備隊中隊長、近衛連隊中隊長などを歴任。1902年には満州・朝鮮国境地帯に派遣され、ロシアの動向を偵察しました。義州を拠点に中国人スパイを使って情報収集を行いましたが、在外公使館との連携不足により、一時帰国することになります。日露戦争では、黒木為楨大将の第一軍に所属し、朝鮮・満州を転戦、少佐に進級しました。

新疆地方への探検

1906年7月、日野は参謀本部から新疆の調査を命じられました。9月20日に北京に到着し、従者の大塚某、清の軍人呉禄貞を加え、中国人に扮して西へ向かいました。陝州では大谷探検隊と出会い、大谷光瑞から助言や機材の提供を受けました。西安で大谷探検隊と別れ、蘭州に向かう途中で日野は急病に罹るも、現地の人間と呉禄貞の看護により回復。蘭州で呉禄貞がパーティーから離脱、1907年1月2日に一行は粛州に到着しました。

粛州から哈密、トルファンへと進み、ウルムチでは外務省の林出賢次郎と接触。日野は林出に自分の娘との結婚を提案し、後に二人は結婚しました。ウルムチでは、ロシア領事館を訪れましたが、タルバガタイ、イリ地方への移動の便宜は拒否されました。タルバガタイでは、日露戦争の影響を確認し、イリ地方では清の役人から歓待を受けました。グルジャ訪問後、カラシャールへ向かい、クチャ、アクスを経てカシュガルに到着。カシュガルでは、イギリス領事マカートニーらと面会しました。

カラコルム山脈を越え、10月1日に日本人として初めてカラコルム峠を越え、レーに到着。シュリーナガルでは、イギリス駐在官ヤングハズバンドや日本軍の稲垣中佐と対面し、カルカッタから日本へ帰国しました。

軍からの退役と大本教への傾倒

1909年5月、新疆での旅行記『伊犁紀行』を刊行。同年中に中佐に昇進。1912年、陝西省方面の反政府勢力の動向を探る命令を受け、大陸へ渡りました。革命派を助け、李烈鈞の日本亡命を斡旋しましたが、1913年5月に帰国。大佐に昇進するも、同日予備役に編入され、軍を退役しました。退役理由は、上官との口論とされています。

その後、青島で缶詰製造の合弁会社を起こしますが、1919年に青島還付問題の陳情委員長として上京。その後、消息を絶ち、京都の綾部で大本教の出口王仁三郎と面会していました。日野は栗原白嶺の退社文を読んで大本教に興味を持ち、綾部に移住。大本教幹部として出口に近侍し、新疆での体験談や資料を提供し、出口の大陸への関心を高めました。

死去と遺産

1920年12月23日、日野は肺結核により亡くなりました。彼の著書『伊犁紀行』は、探検の記録だけでなく、新疆の地理、文化、そして日野自身の思想が詰まった貴重な資料です。軍事情報が詳細に記されている点も特筆すべき点であり、多くの漢詩が収録されていることも特徴です。しかし、この著作の文学的な価値が評価される機会は少なく、再版の際には漢詩の章が削除されています。

日野強は、軍人、探検家、そして宗教家としての顔を持ち、激動の時代を生き抜きました。彼の残した記録は、当時の日本の状況と中央アジアの情勢を理解するための重要な手がかりとなっています。

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