日野龍夫

日野龍夫：近世文学研究の泰斗

日野龍夫(1940年2月12日-2003年6月15日)氏は、日本の近世文学研究において重要な役割を果たした国文学者です。東京に生まれ、京都大学文学部国文科を卒業後、同大学院博士課程を修了。その後、四天王寺女子大学、大阪女子大学などを経て、京都大学文学部教授に就任しました。2003年に定年退官、名誉教授となりましたが、惜しくも同年6月に急逝されました。

研究と業績

日野氏の専門は日本近世文学、特に江戸時代の漢詩、国学、漢学、儒学に及びました。その研究は、論旨の明確さと堅実な実証、そして何よりも平易な文章で知られています。難解な古典を分かりやすく解説する彼の能力は、多くの研究者や学生から高く評価されました。

彼の研究対象は多岐に渡り、古文辞派の漢詩から、本居宣長や上田秋成といった近世中期文学の巨匠、さらには明治文学まで幅広く研究しました。単なる研究者だけでなく、漢詩の創作にも携わっていた多才な人物でした。

主要な業績としては、
『徂徠学派－儒学から文学へ』: 荻生徂徠とその学派に関する研究
『江戸人とユートピア』: 江戸時代の社会思想を考察
『宣長と秋成 近世中期文学の研究』: 本居宣長と上田秋成の作品世界を深く掘り下げた研究
『服部南郭伝攷』: 近世の儒学者、服部南郭に関する詳細な評伝

など多くの著作があります。これらの著作は、近世文学研究において今もなお重要な参考文献として活用されています。没後には、『日野龍夫著作集』（全3巻）が刊行され、その生涯の研究成果がまとめられました。

また、編纂・校訂にも携わり、多くの古典作品の現代語訳や注釈を通して、古典文学の普及にも貢献しました。代表的なものとして、『五世市川団十郎集』、『服部南郭　唐詩選国字解』、『本居宣長集』などがあります。これらの仕事は、古典文学研究に携わる者にとって貴重な資源となっています。

受賞歴

日野氏の学問的功績は高く評価され、数々の賞を受賞しています。
1975年：「文人の交遊」で日本古典文学会賞受賞
2000年：『服部南郭伝攷』で第22回角川源義賞受賞

これらの受賞は、彼の研究が日本の学界においてどれほど高く評価されていたかを如実に示しています。

まとめ

日野龍夫氏は、その明確な論旨と堅実な研究、そして平易な文章で知られる、日本の近世文学研究における重要な人物でした。彼の功績は、多くの著作や編纂物、そして後進の研究者たちに受け継がれ、これからも日本の国文学研究に大きな影響を与え続けるでしょう。彼の急逝は日本の学界にとって大きな損失でしたが、彼の残した業績は今後も多くの研究者や学生にインスピレーションを与え続けることでしょう。

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