旧加古川町公会堂

旧加古川町公会堂について

旧加古川町公会堂（きゅうかこがわちょうこうかいどう）は、兵庫県加古川市加古川町木村に位置し、昭和前期に建設された近代建築です。この公会堂は、1935年（昭和10年）に竣工し、当初から地域の文化活動の中心として機能してきました。公会堂が位置する地域は、数多くの演劇や講演会が開催され、多くの人々が集う場でありました。

設計には、元兵庫県営繕課長の置塩章が関与しており、西洋建築の影響を受けた特徴的なデザインが施されています。特筆すべきは、アールデコ風の幾何学模様を持つステンドグラスの大アーチ窓であり、これが公会堂の顔とも言える存在です。また、側面には連続アーチ窓が並んでおり、1階の正面部分はスクラッチタイルで覆われています。これらのデザイン要素は、建物の美観に大きく寄与しており、そのため、2008年には兵庫県の景観形成重要建造物に指定されています。

1951年（昭和26年）から1971年（昭和46年）までの間、公会堂は公立図書館として利用されていましたが、1971年以降は加古川市立図書館の本館として位置づけられました。1987年には、新たに開館した加古川総合文化センター図書館が中央図書館となり、その後、旧公会堂は地域の分館としての役割を果たしています。市内には、この他にもウェルネスパーク図書館や海洋文化センター図書室があるものの、公式には中央図書館と加古川図書館が「加古川市立図書館」を構成しています。

三島由紀夫とのかかわり

旧加古川町公会堂は、その歴史の中で著名な作家三島由紀夫と深い関わりがあります。1944年（昭和19年）、三島は公会堂の近くにある松の木のもとで徴兵検査を受けたとされ、この松は今でもその姿を保っています。また、彼の半自伝的小説『仮面の告白』には、その際の心情や状況についての記述が残されています。この徴兵検査の事実は公文書でも確認されており、二乙種合格であった三島は、召集令状が届くまでの不安な日々を過ごしていたことが述べられています。

保存の課題

加古川町公会堂は、地域における貴重な歴史的遺産であるため、その保存が求められています。しかし、80年以上が経過した今、耐震強度の不足や雨漏りといった問題に直面し、加古川市では耐震補強の実施には否定的です。加古川市は、2015年に日本建築学会近畿支部より保存の要望を受けているものの、状況は複雑であり、解体の選択肢も検討されています。図書館は2021年に駅前に移転しましたが、旧公会堂は当面書庫として使われる予定です。

アクセス情報

アクセスは、JR神戸線・加古川線の加古川駅から南西に徒歩15分ほどの距離にあります。周辺には歴史的な建物や文化施設が点在しており、訪れる際には周囲の散策もお勧めです。

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