旧台南測候所

旧台南測候所は、台湾の台南市中西区に位置する、かつて気象観測に使用されていた歴史的な建造物です。その特徴的な外観から「胡椒管」とも呼ばれており、正十八角形の建物の中央から白い塔が伸びる独特の構造をしています。

歴史的背景

1895年、日本による台湾統治が開始されると、台湾総督府は新領土のインフラ整備を急務としました。その中で、経済や生活を支える上で気象観測が不可欠であるという認識が生まれました。1896年、台湾総督府の通信課長であった土居通豫は中央気象台の協力を得て、台湾における気象観測体制の構築に着手しました。同年3月には民政局内に測候所に関する部署が設けられ、同年7月には台北、台中、台南、恒春、そして離島の澎湖に測候所が設置されることが決定しました。台南測候所の建設地は、台南市内で最も標高の高い鷲嶺という場所が選ばれました。

建設

台南測候所の建設に先立ち、1895年の乙未戦争終結後には、既に仮の測候所が同じ場所に設置されていました。このことから、場所の選定は気象観測の機能性を重視して行われたと考えられます。1897年から台南を含む各地で測候所の建設が始まり、台南測候所は1898年4月に竣工しました。これは、日本統治時代初期における重要な大型建築物の一つであり、台湾における近代気象観測の普及に大きく貢献しました。

太平洋戦争後

太平洋戦争終結後、国民政府が台湾を接収すると、台南測候所は「台南気象局」と改称されました。1947年には地上観測が再開され、その後、数回の名称変更を経て、1977年7月からは中央気象局台南気象站となりました。測候所内の事務所は、新たに隣接地に建設された庁舎に移転し、中央気象局台湾南区気象センターとして再編されました。

1989年、建物の老朽化を理由に気象観測部門は新庁舎に移転することが決定されました。1998年に気象観測業務を完全に終了すると同時に、台南市政府によって市定古跡に指定され、19世紀末の貴重な大型建築物であること、そして同時期に建設された測候所が日本を含め多くが取り壊されていることを理由に、大規模な改修を経て2003年には内政部によって国定古跡に昇格しました。現在は一般公開されており、見学が可能です。

建築の特徴

測候所庁舎は、ほぼ円形の建物とその中央から伸びる観測用塔で構成されています。下層部分は直径約15メートル、面積は約180平方メートルで、中心部からは直径約3メートル、高さ約6.5メートルの白い塔（風力計）が突出しています。塔の最上部まで含めた高さは約11.6メートルです。下層部分の屋根からは、塔を中心に18本の隅棟が伸びています。建物内部には、東西方向に廊下が設けられ、塔を囲むように6つの執務室が配置されています。

建物はレンガ造りを基調としており、建設当初は屋根に黒瓦が用いられていました。19世紀末の台南市において最も高い建築物の一つであり、当時の台湾でも珍しい高層建築でした。何度かの改修を経て、構造上の大きな変更はありませんが、漆喰塗りだった外壁は赤レンガに変わっています。その独特な形状と歴史的な背景から、旧台南測候所は現在も多くの人々に愛されています。

外部リンク

原台南測候所 文化部文化資産局国家文化資産資網 (繁体字中国語)
古蹟文物展示場 中央気象局南区気象服務 (繁体字中国語)

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