旧川口居留地

旧川口居留地とは

旧川口居留地は、1868年から1899年まで、現在の大阪市西区川口一丁目北部・二丁目北部に設けられていた外国人居留地の跡地です。この地は、旧大阪居留地、または旧大阪川口居留地とも呼ばれていました。全36区画から構成され、その歴史は日本の開国と近代化の過程において重要な役割を果たしました。

歴史

開市と居留地造成の中断

1858年の安政五カ国条約により、二市五港の開市開港が決定しました。当初、アメリカは大阪の開港を求めていましたが、幕府の反対により大阪は「開市」にとどまりました。しかし、安治川と木津川の分岐点に位置する川口には、大坂船手の施設がありました。勝海舟の提言により、1867年に大坂船手が廃止され、その跡地に外国人居留地が設置されることになりました。

ところが、1868年1月1日に大阪が開市された直後、王政復古の大号令や徳川慶喜の逃亡などにより大坂は騒乱状態となり、居留地の造成工事は一時中断されました。その後、明治天皇の大坂行幸により治安が回復し、居留地造成工事が再開されることになりました。

開港と居留地の完成

江戸遷都の方針が固まると、大阪を開市に留めておく理由がなくなり、大阪は開港されることになりました。1868年、五代友厚が中心となり「大坂開港規則」が承認され、大阪港が開港しました。川口運上所も大坂運上所と改称されました。

1868年9月には、永代借地権の競売が行われ、洋風の街並みが形成されました。街路樹や街灯、洋館が建ち並び、外国人雑居地も設けられました。その後、居留地は南西に拡張され、周辺には大阪府庁舎や大阪市庁舎も建設されました。この時期、川口は文明開化の象徴となり、大阪初の電信局、洋食店、中華料理店、カフェなどが開業し、様々な商品が大阪市内に広まりました。

しかし、川口は河港であったため水深が浅く、大型船舶が入港できませんでした。そのため、貿易商は神戸へと移転し、川口の居留地にはキリスト教の宣教師が定住しました。宣教師たちは教会を建てて布教活動を行い、ミッションスクールや病院を設立しました。平安女学院、立教学院、プール学院、大阪女学院、桃山学院といったミッションスクールが川口で創設されました。しかし、これらの施設は後に郊外へと移転し、川口は衰退していきました。

居留地返還後

1899年に居留地制度が廃止されると、川口は大阪市に編入され、大阪市西区川口町となりました。川口には華僑が進出し、中国人街が形成されました。しかし、日中戦争の激化により多くの華僑が帰国し、大阪大空襲で焼け野原となりました。戦後、華僑は大阪市内に拡散し、川口は地味な倉庫街となりました。

現在、川口には古いコンクリート建築や赤煉瓦の倉庫が残っていますが、往時の繁栄の面影は薄れています。本田小学校の一隅に「川口居留地跡」の石碑がひっそりと立っています。しかし、日本聖公会大阪主教座聖堂川口基督教会は、阪神淡路大震災で被災しながらも、多くの寄付によって復旧され、その美しい姿を今に伝えています。

交通アクセス

旧川口居留地へのアクセスは比較的容易です。

地下鉄千日前線・中央線 阿波座駅
京阪中之島線 中之島駅
* 大阪シティバス 川口一丁目停留所 下車

また、大阪駅や淀屋橋駅からバスを利用することも可能です。

まとめ

旧川口居留地は、大阪の歴史において重要な場所であり、文明開化の象徴でした。貿易港としては短命に終わりましたが、キリスト教の伝道拠点として、また教育機関の設立地として重要な役割を果たしました。現在、その面影は薄れていますが、川口基督教会は歴史を伝える貴重な存在です。

もう一度検索