旧広島県港湾事務所

旧広島県港湾事務所：歴史と被爆を語る明治期の遺構

旧広島県港湾事務所は、広島市南区宇品に位置する、明治時代に建てられた貴重な木造建築です。この建物は、かつて広島水上警察署や宇品警察署として使用され、その後、広島港を管理する広島県港湾振興事務所の旧庁舎となりました。

歴史

この建物の歴史は、1881年（明治14年）に設置された「広島水上警察署」に遡ります。1887年（明治20年）には、宇品島の広島市編入に伴い、「広島警察署宇品分署」が併設される形で宇品町に移転しました。

1894年（明治27年）の日清戦争勃発と宇品線の開通により、宇品は兵站拠点として急速に発展し、警察業務も拡大しました。1909年（明治42年）に現在の建物が建設され、宇品分署が移転。1926年（大正15年）には宇品分署が「宇品警察署」に昇格し、1937年（昭和12年）に水上警察署は宇品警察署に統合される形で廃止されました。

1938年（昭和13年）には、宇品地区の発展と日中戦争の拡大に伴い、警察業務の増大に対応するため、建物が増築されました。1945年（昭和20年）8月6日、広島市に原爆が投下された際、この建物は爆心地から4.64kmの地点に位置し、被爆しました。屋根は吹き飛び、一部の梁は折れましたが、倒壊は免れました。

組織再編により、同年9月には宇品警察署は廃止され、「東警察署宇品警部補派出所」となりました。その後、警察法施行に伴い「広島市宇品警察署」、1954年（昭和29年）には「広島県宇品警察署」と改称されました。1964年（昭和39年）4月、新庁舎竣工に伴い移転し、「広島県広島南警察署」に改称しました。

その後、空き家となったこの建物は、1965年（昭和40年）1月に「広島港事務所」に移管されました。広島港事務所はその後、「広島臨海工業地帯建設局」「広島港湾事務所」と改称。1981年（昭和56年）3月に西隣に新庁舎が竣工したため移転し、この建物は倉庫として利用されていました。

1993年（平成5年）、広島市が選定した被爆建物リストに登録され、2010年（平成22年）以降は老朽化により空き家となっていました。

現在

2011年（平成23年）9月、この付近の県所有の空き倉庫が立つ敷地一帯が「宇品デポルトピア」と名付けられ、商業地区として再開発されることになりました。旧港湾事務所も再利用が検討されましたが、耐震補強などの安全性確保の難しさから、2013年時点では民間公募は行われていません。国からの補助金も打ち切られ、商業転用は断念されました。

建築的特徴

この建物は、地上2階建ての木造建築であり、広島に現存する唯一の明治期に建てられた公共建築物です。原爆による被害を受けながらも、その姿を今に伝える貴重な遺構となっています。

アクセス

広島電鉄
広島電鉄宇品線 海岸通停留場下車

関連情報

旧日本銀行広島支店: 広島市内に現存する被爆公共建築物の一つ。
広島陸軍被服支廠: 南区出汐にある被爆建物。

外部リンク

広島県港湾振興事務所ホームページ'>広島県港湾振興事務所ホームページ
* 広島南警察署ホームページ

この旧広島県港湾事務所は、広島の歴史と被爆の記憶を伝える重要な建築物として、その保存と活用が望まれています。

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